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マラソンはいつから始まった?語源は?
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私たちがよく知る競技としての「マラソン」の歴史は120年ほどにすぎません。しかし、はるか昔から長い距離を走る競技は行われており、古代エジプトでは軍隊の訓練の一環として長距離走が取り入れられていたことが記録に残されています。通信技術が発達していなかった時代、長距離を速く走れる者は伝令役として重宝されていたようです。
古代ギリシャの「マラトン」が名前の由来
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「マラソン」は古代ギリシャの地、マラトンに由来しています。紀元前490年、ペルシア軍がギリシャのマラトンに侵攻しましたが、激戦の末にギリシャ軍がこれを撃退し勝利しました。
ギリシャ軍の兵士、フェディピディスはマラトンからアテナイまで勝利を伝えるためにひたすら走り続けましたが、アテナイに到着して「喜べ、わが軍勝てり」と言うや倒れ、そのまま息絶えた、と伝えられています。
この逸話自体には諸説ありますが、近代オリンピックの父と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵はこの逸話に感銘を受け、長距離を走る競技を「マラソン」としてオリンピック種目に加えたのです。
当初は距離が決まっていなかったマラソン
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1896年の第1回アテネオリンピックに先立ち、ギリシャでマラトンからアテネの競技場まで走る競技が開催されました。これが最初のマラソン大会とされていますが距離は40kmで、アテネオリンピックでも同様に40kmで行われました。
このため第1回と同じくマラトンからアテネをコースとした2004年のアテネオリンピックでは、途中で「マラソン戦士の丘」記念碑に寄り道をするような部分を追加して42.195kmに調整していました。距離が統一されたのは第8回のパリオリンピック以降で、第4回ロンドンオリンピックでの距離、42.195kmにを採用したものです。
王妃のわがままが+2.195kmの理由?
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ロンドンオリンピックで距離が42.195kmとなった理由は、当時の英国王妃アレクサンドラがスタート地点を宮殿の庭で、ゴールを競技場ボックス席の前で、と要望して距離が伸びたから、とされています。ただしこれには異論があり、大会側がスタート地点の混乱を避けるための変更だったという説もあります。
このロンドンオリンピックのマラソン大会では、トップで走っていたイタリアのドランド選手が距離を40㎞と勘違いし、ゴールしたと思いこんで倒れ込み、その後も何度もふらふらになって係員に抱え上げてもらいながら1着でゴールしました。判定はもちろん失格、記録も順位も取り消されてしまったことから選手の名前をとって「ドランドの悲劇」と呼ばれています。
しかしドランド選手の不屈の精神に敬意を表して、パリオリンピック以降は42.195kmをマラソンの正式な距離として統一することになったそうです。
オリンピックで女子マラソンが採用されたのは1984年から
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古代オリンピックはもともと男子だけの大会であったことに加え、女子にそんな長い距離を走ることはできないと信じられていたことから長くマラソンは男子のみで行われてきました。
その後、1972年のボストンマラソンで初めて女子の参加が認められるようになりましたが、オリンピックで女子マラソンが正式種目となるのは1984年のロサンゼルスオリンピックまで待たなければならなかったのです。
人類はこんなに速くなった!記録の進化にはシューズと関係が
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機械や道具に頼らず、人の脚だけで長い距離を走るマラソン、一体どれぐらいタイムは縮まったのでしょうか。ここではマラソンの進化を振り返ってみましょう。
最初の世界記録は2時間55分18秒
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初めて42,195kmで争われた第4回ロンドンオリンピックでの優勝タイムは2時間55分18秒でした。現在の世界記録は2017年のベルリンマラソンでケニアのキプチョゲ選手が出した2時間1分39秒なので、約100年の間に53分タイムを短縮したことになります。
さらにキプチョゲ選手は2019年10月に非公認ながら1時間59分40秒というタイムをマークしています。いよいよ人類未踏のフルマラソン1時間台まで、文字通り秒読み段階に入ったといえるでしょう。
革靴で走っていた時代もあった
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このマラソンの高速化に影響を与えているのがランニングシューズの進化です。マラソンが始まった当初はランニングシューズは存在せず、ランナーは普通の革靴などで走っていました。また、日本人選手が開発したランナー用足袋で走っていた時代もあります。
その後、専用のシューズが開発されますが、主に天然皮革やキャンバスといった素材が使用されていたため、ランナーは蒸れによる足のマメに悩まされていました。1959年に先端に小さな穴を開けることで着地時にうまく熱や湿気を逃がすシューズを日本の鬼塚喜八郎が開発し、ランナーから高い評価を得ました。
この鬼塚氏こそ後のアシックスの創業者であり、ランニングシューズのみならずスポーツシューズ全般の発展に多大な功績を残しています。
ランニングシューズの基本ができあがったのは1970年代
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1970年代になるとナイロンやメッシュといった軽く通気性のよい素材が開発され、さらにEVAがミッドソールに採用されるようになりました。EVA(エチレン・ビニール・アセタート)とはゴムよりも軽く、高い衝撃吸収性をもつ素材で1975年にアメリカのブルックスが初めて採用し、他社もこれに追随していきました。現在のランニングシューズの基本はこの頃にできあがったといえるでしょう。
ITEM
ブルックス ゴースト11(メンズ)
サイズ:25.0cm〜29.0cm
重量:300g(メンズ27.0cm)
ITEM
ブルックス ゴースト12 ウィメンズ
サイズ:23.0cm〜25.5cm (特長) ・新クッション材 DNA LOFT使用:軽量設計
厚底シューズの衝撃
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2017年にナイキが革新的なシューズを発表しました。それが皆さまご存知のいわゆる「厚底シューズ」です。ミッドソールに着地の衝撃を反発力に変換する新素材を使用し、さらにカーボンファイバーのプレートを挟み込むことで、これまでにない推進力を産み出す新しいシューズは、「レース用シューズ=薄底」という常識を覆すものでした。
2020年の箱根駅伝でも多くのランナーが着用して新記録を叩き出したことでも話題を呼びましたが、このナイキの独走状態を他社が黙って見過ごすはずはなく、その切磋琢磨の中でこれからもランニングシューズの進化は続いていくのでしょう。
ITEM
ナイキ ズーム フライ 3
■甲材(アッパー):合成繊維 + 合成樹脂
■底材(ソール):合成底
■片足重量:271g / 28cm
▼厚底シューズについてもっと知りたい方はこちらの記事もおすすめ!
マラソンの進化は止まらない!
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最初のマラソン大会の優勝タイムでは、現在の東京マラソンに出場しても1000位以内に入るのがやっとでしょう。科学的なトレーニングやシューズのさらなる進化によってもっと人は速く走ることができるようになるかもしれません。人類はどこまで進化するのか、ますますマラソンから目が離せなくなりそうです。
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