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多くのランナーが膝の痛みを抱えている!?
ランニングを始めたばかりのランナーも、何十年と続けているベテランランナーも、ランニング歴とは関係なく、密接に関わる「膝の痛み」。ランナーの約8割が何らかの膝の痛みを経験していると言われています。一体どうして膝の痛みで悩むランナーが多いのでしょうか?
走っている時の衝撃は「体重の約3倍」!
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ランニング中に膝関節にかかる衝撃は体重の約3倍と言われています。体重50キログラムの人の場合、150㎏もの負荷が膝にかかっていることになります。
さらに、走行距離やランニングの頻度により、衝撃や負担が増えていきます。その衝撃や負荷が無理のない範囲であれば問題はありませんが、自分の体が耐えられる限界を超えたとき、痛みとして膝に影響が出るのです。
原因は走りすぎだけではない!
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下半身を常に動かし続けるランニングでは、膝関節や周囲の筋肉に長時間負荷がかかります。このような「使いすぎ」状態のことを、オーバーユース症候群といい、膝の痛みの原因の1つとされています。
ただ、原因はそれだけでないのです。膝の痛みが出る要因について、次の項目で詳しく紹介していきます。
ランニングで膝が痛むのはなぜ?「4つの要因」を解説
膝の痛みを改善するためには、まずその原因を知ることが大切です。ランナーが抱える膝の痛みの原因は、どのようなことが考えられるのでしょうか?
過度なランニング
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過度なランニングや、大会スケジュールの詰め込み過ぎなどで疲労が取れないままだと、どんどん疲労が蓄積してしまいます。ランナーの皆さんは、意外と自分が走りすぎていることに気が付かないことが多いです。少し走り過ぎかな?と思う方は、ランニングの頻度や大会スケジュールを見返してみましょう。
筋力・柔軟性不足
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筋力不足・柔軟性低下は、関節可動域(関節の動く範囲)を狭めてしまいます。その結果、正しく関節を動かすことが出来ず、膝に痛みを感じてしまうことがあります。
フォームの乱れ
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「あなたは良いランニングフォームで走れていますか?」と聞かれたときに、自信を持って即答出来る人はどのくらいいるでしょうか?自分のフォームはなかなか客観視出来ないですよね。フォームの乱れのほとんどが癖と筋肉や柔軟性によるものです。ランニング中にいつも同じ箇所が疲れる(痛む)場合は、フォームの乱れが原因かもしれません。
合わないシューズや古いシューズ
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合わないシューズを履いて走ると、足の裏の筋肉が上手に使えていないことが多いです。また、古いシューズを履いているとソールの劣化から衝撃吸収力が減り、結果として足首や膝に負担をかけてしまいます。足に違和感を感じる場合は、シューズを見直してみる必要もあるかもしれません。
自分でできる!痛みが出た時の「対処法」を知っておこう
ランニング中に痛みが出た場合に、自分でできる対処法を紹介します。ただし、根本的な解決策ではなく、応急処置と考えてください。あまりにも痛みが続く場合は医療機関を受診することをおすすめします。
痛みが出たらまず「アイシング」
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痛みのある部位を冷やします。氷嚢やビニール袋に氷を入れた物、コールドスプレーなどを用います。
おすすめは氷嚢やビニール袋に入れた氷です。ビニール袋は1枚だと表面温度が低く、凍傷を起こしやすいので、2枚に重ねることがおすすめですよ!時間はおおよそ15~20分ほど。皮膚の感覚がなくなる程度まで行いましょう。
コールドスプレーは、外出先や氷がないときに便利です。テーピングの上からコールドスプレーを噴射すると、テープが冷えてしばらく冷却出来るのでテーピングがある場合はこの方法も有効です。
「テーピング」でサポートする
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テーピングを貼ることで、関節の補強や固定をすることが出来ます。動作に支障のない範囲でテーピングを使い関節の動きを制限するので、痛みの軽減や予防に繋がります。
膝は曲げ伸ばしの多い関節なので、伸縮性の高い「キネシオテーピング」がおすすめです。
ITEM
テーピング KINESYS カラーキネシオロジーテープ
●原材料:レーヨン糸/ポリウレタン糸 糊:アクリル系粘着剤
●サイズ:5cm×5m
●カラー:ピンク
▼テーピングについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめ!
「ストレッチ&筋トレ」でコンディションを整える
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ストレッチでは、疲労が溜まっている筋肉を緩め、整える効果が期待出来ます。また、筋トレでは、弱い筋肉を鍛えることで、フォームの安定や怪我を予防する効果が期待出来ます。
どちらも定期的に行うことで、疲れ知らず、怪我知らずの体に近づけますよ。痛む部位に合わせたトレーニング方法は、記事の後半で詳しく紹介します。
思い切って「休息」する
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色々試してみても、疲れや痛みが取れない場合には、ランニングを一旦お休みしましょう。休むという行為は勇気がいりますが、体にとってはとても良い影響を与えてくれます。好きなことをしたり、リラックスをして過ごしてみてくださいね。
あなたの痛みはどこから?症状から「原因」を特定しよう!
膝の内側・外側など痛みが出る場所はそれぞれ。現在、膝の痛みがある方はどこに当てはまるか見ていきましょう。
【膝の内側】鵞足炎
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鵞足(がそく)とは、太もも内側から脛の骨に向かって伸びている筋肉(縫工筋・薄筋・半腱様筋)の結合部分を指します。指の間にヒレが付いたガチョウの足のような形から、鵞足と名前が付けられています。鵞足炎では、膝の内側、脛にかけて慢性的な痛みを感じます。
【原因】
ウォーミングアップ不足、過度なランニングによる摩擦、大腿後方~内側の筋力・柔軟性低下など。
かかとが内側に倒れていたり、長時間アスファルトを走ることでも起こりやすいと言われています。
【膝の外側】腸脛靭帯炎
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腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とは、骨盤から脛の骨にかけて外側に伸びている靭帯を指します。(写真グレーの部分)
ランナーに多い症状から「ランナー膝」や「ランナーズニー」とも呼ばれており、膝の外側にズキズキとした疼痛を感じます。悪化すると日常生活にも支障をきたす痛みになります。
【原因】
過度なランニングによる膝の曲げ伸ばしの摩擦、フォームの乱れ、大腿の筋力不足など。
O脚のランナーは、外側に負担がかかりやすい為、腸脛靱帯炎になりやすいと言われています。
【膝の裏側】膝蓋大腿関節障害
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膝蓋大腿関節とは、膝蓋骨と大腿骨が接している軟骨部分を指します。別名「PFPS(Patello Femoral Pain Syndrome)」とも呼ばれています。この周囲に炎症が起こると、膝の皿の裏側や周辺に痛みを感じるようになります。
【原因】
ランニングによる膝の曲げ伸ばしの繰り返し、大腿(特に内側)の筋力不足、フォームの乱れなど。
軟骨部分部部がすり減ったり、変形することで、ランニングや階段などの昇降運動で膝蓋骨周辺に痛みや違和感を感じます。
【症状別】膝の痛みに効果的な「ストレッチ&筋トレ」
ここからは、ランナーの起こりやすい膝の痛み、症状別にストレッチと筋トレをご紹介します。少しずつチャレンジして痛みを改善していきましょう!
【鵞足炎】内ももストレッチ
撮影:m_fitness
鵞足炎の場合、大腿後方~内側の筋肉が硬くなっていることが考えられます。
内ももの柔軟性を高めていきましょう。
手順
- 仰向けに寝て膝を90°に曲げる
- 足の裏同士をくっつけて膝を外側へ開く
- 腰が浮かない範囲の気持ちよい所でキープ
〈ポイント〉
腰が浮いてしまうほど、無理に膝を開かなくてOK!
気持ちよく感じるところで呼吸を繰り返しましょう。
【鵞足炎】お尻トレーニング(ヒップリフト)
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鵞足炎の場合、お尻の筋肉やハムストリングス、内転筋が弱化しているので、鍛えることが大切です。
手順
- 仰向けに寝て膝を90°に曲げる
- 踵は出来るだけお尻に近づける
- お尻を持ち上げ、膝から肩まで一直線にする
- ゆっくりとお尻を床に近づける
- 10回を目安に3セット行う
〈ポイント〉
お尻を持ち上げた時に、腰の力が抜けてお腹が突き出ないように意識します。
また、内ももにも刺激を与えたいので、小さなゴムボールを膝の間に挟み、押しつぶしながら行うこともおすすめです!
ITEM
ダンノ(DANNO) ソフトギムニク
●素材:PVC
●サイズ:径23cm
●重さ:100g
●耐用重量:100kg以内
【腸脛靭帯炎】外ももストレッチ
撮影:m_fitness
腸脛靱帯炎の場合、腸脛靱帯が走っている太もも外側の筋肉が硬くなりやすいので、伸ばしていきましょう。
手順
- 仰向けに寝て、右膝を90°に曲げる
- 右膝を左足の上に乗せるように倒す
- 右膝を伸ばし、両手は肩の横に伸ばす
- 反対側も同様に行う
〈ポイント〉
膝を倒す時に、肩が浮かないようにしっかりと付けておくとより伸びを感じます。
【腸脛靭帯炎】お尻筋トレ(クラムシェル)
撮影:m_fitness
外ももを伸ばした後に、外ももに頼らずにお尻を使えるようにトレーニングをしましょう。
お尻を触りながら行うと、意識がしやすいですよ。
手順
- 横向きに寝て、股関節と膝を90°にする
- 足は付けたまま、上の膝を開く
- 元の位置へ戻す
- 10回を目安に3セット行う
〈ポイント〉
膝を開く時に、骨盤が一緒に後ろに倒れないように、おへそは正面に向けたまま行いましょう。
ゴムバンドを膝の上に付けて行うとよりお尻が意識しやすくなります。
ITEM
NISHI ニシスポーツ ミニバンド
●素材:ラテックス製
●サイズ:W50mm×(円周)515mm
【膝蓋大腿関節障害】お尻ストレッチ
撮影:m_fitness
膝蓋大腿関節は、お尻や外ももの筋肉が硬くなることで引っ張られてしまいます。お尻や外ももを気持ち良く伸ばしていきます。
手順
- 仰向けに寝て膝90°に曲げる
- 右の踵を左の膝の上に乗せる
- 右膝を外へ開く
- そのまま足を胸に近づけるように引き寄せる
- 余裕がある場合は、両手で足を更に引き寄せる
〈ポイント〉
お尻や外ももの筋肉が伸びていることを感じましょう。手で引き寄せることが難しい場合には、手の代わりにタオルを足に通して引き寄せると行いやすいですよ。
【膝蓋大腿関節障害】内もも筋トレ
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膝関節を支えてくれいる、大腿内側の筋肉を鍛えていきましょう。
手順
- まっすぐ立ち、右足をつま先を前にして椅子またはバランスボールの上に乗せる
- 片脚でスクワットをするイメージで左足に重心を乗せお尻を引く
- 元の位置へ戻るように膝を伸ばす
- 10回を目安に3セット行う
〈ポイント〉
乗せている足の内ももに意識を向けましょう。
軸足の膝がつま先より前に出ないように、お尻をしっかりと引くことがポイントです。
ITEM
アディダス ジムボール
●素材:ポリマー(耐バースト素材)
●サイズ:直径最大65cm(ポンプ付)
●カラー:グレー
●耐荷重:約110kg
【全てに共通】タオルギャザー
撮影:m_fitness
全ての膝の痛みやランナーに共通しておすすめのトレーニングは、「タオルギャザー」
足の指を使ってタオルをたぐり寄せることで足の裏の筋肉を使っていきます。
手順
- 立位もしくは椅子に座る
- タオルの上に足の指を置く
- 足の指を使ってタオルをたぐり寄せる
- 反対側も同様に行う
〈ポイント〉
はじめて行う時や、足の裏が上手く使えていない場合には、たぐり寄せることが難しかったり、足裏がつりそうになるかもしれません。回数を重ねて繰り返していくことで、足の裏の筋肉が活性化され、その結果膝の安定に繋がりますので、コツコツ頑張ってみましょう。
膝の悩みをなくして、ランニングを楽しもう!
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筋トレやストレッチを適切に行うことで、体が整い、慢性的な膝の痛みも予防することができます。痛くなる前に予防出来ることがベストですが、痛みを感じたときは焦らずゆっくりと自分の体と向き合っていきましょう。
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