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そもそも「肉離れ」ってどんな症状?
ランナーだけでなく他のスポーツでも多くのアスリートが悩まされる肉離れ。脚が痛くなることは知っていても実際にはどんな症状なのか知らない方も意外にいらっしゃるのではないでしょうか。
「肉離れ=「ミート、バイバイ」?
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マラソン解説者の増田明美さんが、日本のレジェンドランナーである瀬古利彦さんの若き日のエピソードを紹介していました。海外のレースに瀬古さんが出場した時、不幸にも肉離れに襲われてしまったのです。
その時に瀬古さんは周りの外国人の方に、「アイ・アム・ミート・バイバイ!(肉がバイバイ…「肉離れ」?)」とボディランゲージ混じりで訴えて、しかもそれがなんとなく通じて?事なきを得たそうです!
実際の肉離れの英訳は(もちろん)「ミート・バイバイ」ではなく、「pulled muscle」、つまり筋肉をぐいっと引っ張ったようなイメージでしょうか。肉離れというと骨から筋肉がはがれしまうような状態を思い描いてしまうかもしれませんが、実際には筋肉の繊維や筋膜が裂けたり傷んでしまう症状です。
肉離れが起きる理由は?
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肉離れの原因は、急激に強く筋肉を伸ばしたり縮めたりするような動きにあると言われています。たとえば急にダッシュしたり、幅跳びのようにジャンプして着地するような動きが挙げられます。
肉離れが起こりやすいのは上半身よりも筋肉により負荷のかかる下半身で、特にハムストリングス(太もも裏の筋肉)や大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)、そしてふくらはぎの筋肉に多いようです。
また筋肉自体に疲労が溜まって弱っていたり、加齢により筋繊維が硬化したり、準備運動不足だったりしても肉離れを起こしやすくなります。
どんな痛みが出る?
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脚の筋肉が肉離れを起こすと運動を続けられないほどの激痛が走ると言われています。痛みのある部位が変色したりくぼみができるなど、見た目でも肉離れしたのがわかる場合もあります。
肉離れには、軽症、中程度、そして重症の3段階があり、軽症なら痛みはありますが、なんとか自力で歩くことは可能なレベルです。
中程度になると痛みで自力歩行が難しくなります。
重症になると自力で歩けなくなるほど痛みがひどいのはもちろん、患部にへこみが見られるようになります。
軽症であれば数日で治ることもありますが、重症の場合は完治するまで数ヶ月かかることもあります。
肉離れを予防するにはストレッチ!
肉離れは瞬間的に筋肉に負荷をかけることで発生します。そのため予防には筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチがもっとも有効です。ただし、ここで紹介しているストレッチは全て予防のためのものなので肉離れ直後に行うのは絶対にやめてください。
ハムストリングスとふくらはぎのストレッチ
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- 両足をそろえて立ちます。
- 両手は腰に揃えて右足を前に出してひざを90度になるように曲げます。この時、ひざがつま先より出ないように気をつけましょう。
- 左足の後ろ側、ハムストリングスとふくらはぎをゆっくりと伸ばします(約20秒)。
- 右足を元に戻し、次に左足を前に出して同じように右足の後ろ側を伸ばします。
- 1〜4を3セット行います。
最初から脚の後ろ側を一気に伸ばすのではなく、じっくりと荷重をかけていくのがポイントです。
太もも(前面)のストレッチ
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- 両足をそろえて立ちます。
- 右足を曲げて右手で足首をつかみます。
- 足首をお尻の方まで持ち上げてキープします(約20秒)
- 足をおろして左足も同様に行います。
- 1〜4を3セット行います。
無理にバランスを取る必要はありません、しっかりと太ももの前側を伸ばすことが目的なので、手すりなどにつかまってやるとより効果的です。
もしかして肉離れ?そんな時どうすればいい?
もし肉離れ?と思ったらどうすればいいのでしょうか。肉離れになった時に無理をすると完治までに長い時間を要することもあるので注意が必要です。冷静に、落ち着いて対応しましょう。
無理に動かすのは厳禁!
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ランニング中やマラソン大会中に肉離れになってしまったら、走るのをやめ、痛みが落ち着くまで動かないようにしましょう。
あせってストレッチしたり、痛みがあるまま走り出したりするのは厳禁です。患部の腫れが引かないうちに動き出してしまうとダメージが大きくなってさらに完治が遠のく恐れがあります。
一緒に走っている人がいればコンビニなどで氷を買ってきてもらい、患部に氷を袋ごとあててアイシングすると良いでしょう。横になって、足を持ち上げて痛みが出た部分を心臓よりも高い位置に置くようにすると腫れを軽減させるのに有効です。
これらの処置はいずれも応急処置です。その後は早目に病院で診てもらうようにしましょう。肉離れは症状がさまざまで数日で治る場合もあれば数ヶ月尾を引くこともあります。一刻も早く走りたいという気持ちはよくわかりますが、素人判断は危険です。
実は肉離れではないことも
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足がつる、いわゆるこむら返りになると肉離れに近い症状が出ます。こむら返りの原因はさまざまですが脱水症状によるミネラル不足や、披露の蓄積による場合が多いと言われています。肉離れは筋繊維の断裂により力が入らなくなってしまいますが、こむら返りの場合は筋肉の収縮で痛みが発生するので力が抜けなくなるという違いがあります。
また、肉離れと間違えやすい例としては他に筋膜炎があります。
筋膜炎は筋肉のオーバーユース(使い過ぎ)で炎症を起こして固まってしまうことで起こります。特にランナーに多いのは足の裏に発生する足底筋膜炎(そくていきんまくえん)です。いずれにしてもちゃんと病院で診てもらわないと素人では判断がつきません。そのためにも早く病院に行くことが大事です。
「走る」以外のトレーニングに切り替える
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走ってはダメ、となると普段ストイックにトレーニングをしている人ほど不安になってしまうでしょう。
そんな時にはプールでのトレーニングがおすすめです。特に脚にプルブイ(うきわ)をはさんで腕だけで泳ぐプルスイムがおすすめです。クロールはバタ足を使わないと姿勢が不安定になるので、しっかり体幹を意識して泳がないとうまく前に進みません。体幹を強化することは肉離れを再発させないためにも重要です。
泳ぐのが苦手ならプールでのウォーキングが良いでしょう。陸上よりも脚にかかる負荷が少ないのと思った以上に水の抵抗があるのでリハビリには最適です。
水泳以外にランニングの代替トレーニングとしてよく候補に上がるのが自転車です。ランニングほど脚への負担がかからないのがポイントですが、一点気をつけていただきたいのがサドルの高さです。
サドルの高さが低いとペダルを漕ぐ時に腿上げのようになってしまい、余計な負荷がかかってしまいます。ペダルが一番下に来た時に脚が伸び切らない程度になるぐらいにサドルを上げてみましょう。実はこの方が楽にペダルを漕げるポジションになるのです。特にママチャリに乗られている方はサドルが低いことが多いので一度ポジションを見直してみることをおすすめします。
再発防止のためには?ストレッチ以外の方法を紹介
一度肉離れを起こしてしまうと、再発しやすくなる、と言われています。そのためには日頃のストレッチが重要ですが、他に防止する方法はないのでしょうか。ストレッチと合わせて、練習時やここぞという本番時に活用したいアイテムを紹介します。
テーピングやサポーターで補強
あらかじめ太ももや膝周りをテーピングで補強する方法もあります。
テーピングによって筋肉の可動領域を制限して、肉離れを起こした部分を補強することで再発防止には効果的です。
ITEM
ニトリート キネロジEX
内容量:50.0mm×5m
製造国:日本
ニトリートキネロジEXは従来のキネロジ以上に通気性にもこだわっています。貼る時はもちろん、剥がすときもきれいに剥がれるのが嬉しいですね。
とはいえ、運動時に毎回テーピングするのは面倒、という方も多いでしょう。そういう方にはサポーター着用をおすすめします。あまり締め上げてしまうと逆効果なのできつくならない程度にサポートする製品が肉離れ対策にはよいでしょう。
ITEM
コーワ バンテリンサポーター ふくらはぎアシスト
材質:ナイロン、ポリウレタン
原産国 :日本
サポーターといえばバンテリンのコーワサポーターです。ふくらはぎの主要な筋肉、腓腹筋の働きをサポートし、脚の動きがスムーズになり、疲れにくくなる構造になっています。
ゲイターも効果的!
肉離れを起こしたのがふくらはぎであれば、ひざ下全体をカバーするゲイター(カーフスリーブ)の着用をおすすめします。着圧で血流を良くするポンプ効果のある製品ならより効果的です。
ITEM
C3fit インスピレーション カーフスリーブ(ユニセックス)
素材:ナイロン75%、ポリウレタン25%
ふくらはぎサイズ:XS(30−34cm)、S(32−36cm)、M(34−38cm)、L(36−40cm)、XL(38−42cm)
脇丈サイズ:XS(28cm)、S(29cm)、M(31cm)、L(32cm)、XL(32cm)
カラー:ブラック、グレー、スモークネイビー、ホワイト
原産国:日本
C3fitのカーフスリーブは着る医療品と呼ばれています。サポート性がありながら締め付けるような感覚もなく、快適な着心地が好評です。
走るなら裸足感覚のシューズで
最近の流行は反発力を活かして走る、カーボンプレートの厚底シューズですが、通常のシューズよりも脚への負荷は高くなります。故障明けであればむしろ裸足感覚のシューズで、距離も控えめに走るようにしましょう。
ITEM
ナイキ フリー ラン フライニット 3.0
甲材(アッパー):合成繊維
底材(ソール):合成底
片足重量:187g / 28cm
生産国:ベトナム
ナイキフリーランは履いているのを忘れるようなナチュラルな履き心地が特徴です。
レースでタイムを出す、というシューズではなく脚を傷めることなく鍛えてくれるシューズです。長い距離を走ったり、速いスピードで走らなくても大丈夫、ランナーとしての芯を鍛えてくれるモデルです。
何よりも無理をしないこと
最大の予防はなんと言っても無理をしないことです。
私の知り合いのランナーの中にも肉離れを起こして、治ったらすぐに以前と同じレベルの練習をいきなり行って、また状態を悪化させてしまった方もいます。焦っても傷んだ筋肉はすぐには修復しません。徐々に徐々に身体を慣らしていくことが重要なのです。
肉離れ発生の仕組みを知って正しく予防!
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ランナーなら誰しも故障せず元気に走りたいと思うものです。しかし、私自身を含む一般の市民ランナーならしっかり対策を取ったり、休養を入れることで肉離れを予防することは可能です。もしすでに肉離れになってしまった、という方がいればまずは安静にして早期の回復を目指すことが重要です。
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