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マラソンの必須トレーニング?閾値走とは
マラソンのために普段どんな練習に取り組んでいますか?「基本的にはジョギングだけ」という人は、途中でタイムが伸び悩んでしまう傾向があります。マラソンのタイムを縮めたいなら、本番よりも速いペースのトレーニングを行い、体に刺激を与えてみましょう。
速いペースの練習としては、インターバルトレーニングなどが代表的ですが、持久力を中心に鍛えるのであれば「閾値走(いきちそう・しきいちそう)」を取り入れるのがおすすめです。なにやら聞き慣れない名前ですが、一体どのような練習なのか紹介します。
乳酸が出始める直前のペースで走る練習
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閾値走の「閾値」とは、乳酸が急激に増え始める運動強度のことです。運動強度が低くゆっくりなペースで走るとき、乳酸は走るスピードに比例して増えていきます。
ところが、この「閾値」を超えると急激に乳酸が増え始め、運動を継続するのが困難になります。
閾値走とは、この閾値の直前のペースで持久走を行うトレーニングのことです。
速いスピードを維持する「スピード持久力」を養う
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この閾値走を繰り返し行っていくと、閾値となるペースがどんどん速くなっていきます。例えば、今まで1km4分ペースが閾値だった場合、閾値走を繰り返し行うことで、閾値は1km3分50秒、3分40秒と上がっていきます。
このように走力が向上することによって、前まで閾値だった1km4分のペースが楽に感じられるようになります。また、マラソンで走るペースよりも速いので、心肺機能に刺激が入り持久力を鍛える効果もあります。
もちろん、ロングジョグでも持久力を養うことはできますが、速いペースに対応する力はなかなか身につきません。閾値走を行うことで、同じ速度で走ったときの乳酸の発生を抑えることができるため、「スピード持久力」を養うことができます。
そのため、マラソンランナーだけでなく800mランナーなど、中距離種目の練習としても実施されています。
精神的にもきつい!その分トレーニング効果は大きい
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閾値走は長距離を走れるマラソンペースよりも速く、「これ以上走ったら足が重くなる」というギリギリのペースです。インターバル走よりは遅いですが、その分疾走時間は長くなります。そのため、肉体面だけでなく精神的にもかなり負荷がかかる練習です。
私自身、5000mのタイムが一番良かったときは、1km3分15秒のペースで1600m×5本、3200m×3本などの閾値走を行っていました。消して楽なペースではないため、慣れるまでは1600m3本目から足が重くなり、途中でやめようと何度も思ったことを思い出します。
その分、閾値走よりも遅いペースで走るときは気持ち的に楽になり、たとえ少しペースが上がったとしても冷静に走れるようになります。
また、個人的には練習効果を一番実感しやすい練習でもありました。負荷が高いので1週間に一度(月に4回)閾値走を行っていましたが、翌月になると今までのペースが楽に感じるようになります。
タイムアップの近道に!閾値走の3つのメリット
閾値走は非常にきつい反面、多くのメリットがあります。閾値走を練習に取り入れるとどんな効果があるのか、具体的に紹介します。
マラソンペースが楽に感じる
閾値走はマラソンペースよりも速いペースランニングです。この練習を繰り返すことによって、マラソンペースが楽に感じるようになります。
また、精神的にきつい練習を乗り越えたことで、大会本番でも心に余裕をもって走ることができるでしょう。
維持できるペースが速くなる
閾値走によって、閾値が改善すれば、以前よりも速いペースのランニングを継続できるようになります。すぐに疲れてしまうような速いスピードだと思っていたペースでも、長時間維持できるようになるのです。マラソン大会の後半で失速してしまうことが多い方には特に効果があります。
もちろん、閾値を超えるようなペースまで上がってしまうと、当然すぐにバテてしまいます。自分の閾値を見極めながら、少しずつステップアップを目指しましょう。
ペースのアップダウンに対応できるようになる
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レース中にペースのアップダウンがあると、乳酸が発生しやすくなるので後半失速しやすくなります。特にマラソンの場合は、誰かの後ろをついていくシーンが多いので、予定していたペースより速くなってしまうことも多いです。
その対策として、普段から閾値走を練習に取り入れることで、乳酸が発生する閾値を押し上げることができます。閾値ペースの範囲内であれば、乳酸の発生を抑えられるので、ペース変化に余裕を持って対応できるようになります。
ペースはどうやって設定する?
メリットが多い閾値走ですが、自分の閾値ペースはどうやって判断したら良いのでしょうか。ここからは閾値ペースの設定方法をいくつか紹介します。
20分は継続して走れるペース
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閾値走は「これ以上ペースを上げたら失速する。でも、このペースで走ったら20分~30分くらいは走れる。」というギリギリのペースです。全力で走るペースではなく、全力の8割~9割くらいのペースと考えてください。
閾値ペースの感覚を掴むためには、20分間走を何回か繰り返すのが効果的です。一定のペースで無理なく走れる一番速いペースを閾値ペースに設定します。
また、マラソンを問題なく完走できる体力がある人であれば、ビルドアップ走を活用して閾値を考えるのもおすすめです。ビルドアップ走は段階的にスピードを上げていく練習です。500m~1000mごとにペースを上げていき、急激に失速したときの手前が閾値ペースと考えることができます。
▼ビルドアップ走について知りたい方はこちらの記事がおすすめ!
疲労が全快した状態なら60分は走れるペース
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閾値ペースは20分であれば問題なく走れるペースですが、レース当日のように疲労を完全に抜いて万全の調子であれば、60分ほど維持できるペースでもあります。
そのため、トップランナーはハーフマラソンのレースペースを閾値ペースとして設定していることが多いです。もしハーフマラソンを全力で走ったことがある方であれば、ハーフマラソンのペースを設定してみると良いでしょう。
ただし、ハーフマラソンを走った回数が少ない方だと、ペース配分が分からずベストなタイムが出ていないケースもあります。この場合は、閾値ペースよりも遅い可能性があるので、他の方法も併せて確認しましょう。
心拍数を目安にすると「最大心拍数の85~90%」
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スマートウォッチや心拍数計を持っている人であれば、心拍数を目安にするのも有効です。閾値ペースは最大心拍数の85~90%と言われています。
最大心拍数は「220 − 年齢」で求められます。30歳の人であれば、最大心拍数は190、閾値ペースの心拍数は161.5~171になります。
閾値走やインターバルトレーニングを実施するときは、スマートウォッチがあると正確なペースを刻みやすくなります。
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閾値走のやり方は?練習メニューとポイントを解説!
閾値ペースを掴むことができたら、実際に練習に取り入れてみましょう。ここからは閾値走のトレーニングメニューを紹介します。
基本は閾値ペースで走るインターバルトレーニング
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閾値走のやり方としては、大きく分けると2種類あります。
まず一つ目は、閾値ペースを維持して20〜30分走る「テンポ走」という方法です。しかし、先ほどお伝えした通り、この時間は閾値ペースで走れる限界です。閾値走に慣れていない方には負担が大きく、後半はフォームが崩れてしまうことも。これでは閾値走の効果が期待できません。
そこで、普段の練習として取り入れるのにおすすめなのが、5分~15分ほどの閾値走を数回繰り返す「クルーズインターバル」です。インターバル間の休息時間は、5分間の疾走につき1分を目安にしてください。疾走時間の合計は60分以内に設定すると良いでしょう。
【クルーズインターバルの実践例】
●1600m×5本~8本
●3200m×3本~5本
●4800m×2本
●10分間走×3本~5本
まずはクルーズインターバルから始めて、スピード持久力が身についてきたらテンポ走を取り入れるのが効果的です。テンポ走を取り入れる場合、いきなり30分で実施するのは負担が非常に大きいです。まずは20分から始めて、徐々に体を慣らしていきましょう。
また、マラソン本番を想定して練習している方であれば、マラソンペース走と閾値走を組み合わせるのも有効です。
【マラソンペース走に挟む場合】
●マラソンペース走10km+閾値走1600m+マラソンペース走10km
●マラソンペース走10km+閾値走1600m×3本
ペースのアップダウンは極力抑える
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閾値走は基本的に設定したペースを守り、一定のペースで走るようにします。もし途中で設定タイムが落ちてしまう場合は、オーバーペースになっている可能性が高いため、ペースを落としましょう。
また、クルーズインターバルの最後の1本で余裕を感じる場合は、ペースを上げて追い込むのではなく、さらに1本追加する方が良いですね。持久力は心肺機能に刺激を与える時間によって影響を受けています。この場合は、5分間の閾値走を追加するのがおすすめです。
最初は短い距離からスタートする
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初めて閾値走をするのであれば、5分くらいの閾値ペース走を3本走るところから始めましょう。最初は閾値走のペース感覚を掴むのが難しいので、短い距離で繰り返し行って最適なペースを見つけるようにするのが有効です。
閾値走を活用してマラソンのタイムを縮めよう!
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閾値走はマラソンなどの持久系の種目で効果を発揮するトレーニングの1つです。特にマラソンのタイムを縮めたい方や後半に失速してしまう方、ペースのアップダウンに対応できない方に適しています。閾値走によってスピード持久力を身に付け、マラソンで自己ベストを狙ってみましょう。
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