アイキャッチ画像提供:Ayaka Ueda
スカイランニングとは? マラソンやトレイルランニングとの違い
ロードランニングがすっかり市民権を得たいま、確実にその競技人口を増やしているのが「スカイランニング」です。スカイランニングとは、山岳や超高層ビルを頂上に向かって駈け上がるアクティビティです。それってめちゃくちゃキツイんじゃあ……、と思われがちですが、まさしくその通り。自分を追い込み己と戦う、Mっ気たっぷりの競技です。それでもなお、少なくない人がそのスポーツに魅了されるのは何故なのでしょうか。スカイランニングの定義や、トレイルランニング(以下トレラン)との違いなどについて解説していきます。
撮影:鈴木すず
そもそもトレイルとは未舗装路のこと。林道や岩場、地面が土の登山道など、いわゆる「アスファルトで整備はされていないが人が通れる道」をそう呼びます。そこを走るスポーツ全般がトレラン。そしてスカイランニングは縦方向への移動、つまり登りの斜度が高いものを差しています。その中でもいくつか種類があり、日本スカイランニング協会の定義によると、主に下記の3つ分けられてます。
①SKY(スカイ)
スカイランニングの中では中距離とされるレース。距離は20〜49kmで、累積標高差(登った全ての標高を足し合わせた数字)は1,300m以上とされています。この登り具合を例えるなら、富士山五合目吉田口から山頂まで登るのに近いと言うとイメージがしやすいでしょうか。
②SKYULTRA(スカイウルトラ)
スカイランニングの中では長距離とされるレース。距離は50〜99kmで、累積標高差は3,200m以上! そのコースを駆け上がり、時に稜線を走り、最後はゴールに向かって駈け下ります。レースにもよりますが、大体制限時間は16時間以内が一般的です。
③VERTICAL(バーティカル)
スカイやスカイウルトラは主に低地をスタートし、登って下りてフィニッシュが通常ですが、バーティカルには下りはありません。つまり登りのみのレース。平均20%以上の斜度(一部33%以上を含む)を頂上目指して一気に駆け上がります。山岳を舞台としたケースの他に、東京タワーの階段やスキーのゲレンデをコースとするレースも。
なぜそんなにハマる?スカイランニングの魅力
平地を走ることでさえシンドイのに、なぜ人はよりハードなスポーツであるスカイランニングに魅了されるのでしょうか。もちろんその理由は人によって異なってくるかと思いますが、ここでは私が考えるその理由をご紹介したいと思います。
美しい景色が見られる
提供:Ayaka Ueda
高層ビルの上層階から見える景色って綺麗ですよね。そのように人工的な景観にも人は心を揺さぶられますが、自然のそれは非日常性が増すと言う意味でもまた別物。特に自らの脚を使ってキツい思いをして登った後、ご褒美のように眼前に広がる景色の美しさは言葉では言い表わせないほどです。
舗装路と違ってサーフェスが様々なので飽きない
提供:Hideki Fujikawa
マラソンのようなロードレースは主にアスファルトの上を、いかに効率的なフォームを崩さずに走ることが求められます。それはそれで面白いものですが、スカイランニングは岩場や木の根が張った土の上、砂地や草地を走ります。したがって足を引っ掛けたりして怪我をしない為にも、常にどこで足を着地させるか考える必要があり、一歩一歩にクリエイティビティがあるのです。
「苦しい」の上の境地に到達出来る
提供:Ayaka Ueda, photo : Nagi Murofushi
何か目標があって、それに到達出来た時って嬉しいですよね。けど、それが大きな苦労も無くなんとなく達成してしまった時ってなんかもやもやが残ると言うか、嬉しいのだけれどどこかスッキリしなかったり。そんな経験ってありませんか? 「苦しい」と「楽しい」はとかく正反対のものと思われがちですが、もしかするとそうではなく「楽しい」は「苦しい」の別の境地に至ることなのかも知れません。同じ場所でも、そこに至る過程によって見える景色は変わってくるもの。先にも述べましたがスカイランニングはハードなスポーツです。ハードであるからこそ、ゴールに到達した時の楽しさはまた格別なのです。
どこで走れる?スカイランニング
そんなにキツいなら自分にはハードルが高過ぎるのではと萎縮することなかれ。そんな方々の為に、初心者向けのレースもちゃんと存在するのです。ここでは距離も累積標高差もビギナー向けなレースをご紹介したいと思います。
HOTAKA SKYRUN
群馬県は尾瀬の里及び武尊山山域を舞台にしたレース。尾瀬は「はるかな尾瀬、遠い空」と唱歌でも歌われているように、水芭蕉の花が有名な本州最大級の高層湿原です。抜けの良い美しい緑の中を走れる爽快感は本大会の魅力の一つ。OGUNA VERTICAL(距離4.7㎞/累積標高差800m)と「HOTAKA SKYRACE(22㎞/累積標高差1,600m)の2種目があり、走力に合わせて種目を選べます。
HOTAKA SKYRUN
びわ湖バレイスカイラン
琵琶湖を取り囲む山岳を舞台にしたレース。ゴールのある山頂では贅沢にも琵琶湖をパノラマで眺めることが可能です。初心者向けの「打見バーティカル」は、スカイランニングビギナーに心地良い疲労と達成感を授与。ゴール後はデートスポットとしても有名なびわ湖テラスでのんびり時間を過ごすのも一興。下山にはロープウェイを使えるので、国内最大の湖が誇る偉観に酔いしれながら、のんびりとアフターフィニッシュを楽しめますよ。
びわ湖バレイスカイラン
日光白根山アセント
群馬県片品村にある「丸沼高原スキー場」を舞台とし、日本百名山の一つであり以北で最も高い山である日光白根山(標高2,578m)に向かってゲレンデを一気に駆け上がるレース。見所の一つである弥陀ヶ池や五色沼へは舗装路や交通手段がなく、自らの脚でしか行くことが不可能。であるからこそ、その周辺に残る手付かずの自然の美しさには心を揺さぶられます。全体的に景色の抜けが良い箇所が多く、またゲレンデから岩場までバリエーション豊富なコースがキツ楽しいと評判です。
日光白根山アセント
志賀高原エクストリームトレイル
いくつもの山が存在し、池や沼などの景勝地も数多く広がる大自然の観光リゾート地、志賀高原が舞台。開催時期が10月なので、タイミングが合えば美しい紅葉に囲まれてレースを楽しむことができます。レース中に突如現れる大沼池は深い青を讃え、どこか神秘的な雰囲気。ショートの距離は8km。レース終了後は志賀高原を代表する名湯、熊の湯温泉で疲れた身体をリカバリーして下さい。
志賀高原エクストリームトレイル
富士登山競走
富士登山競走の魅力は何と言っても日本で一番高い場所へと続くトレイルを走れること。“過酷に挑む、価値はある”のキャッチコピー通り、決して楽なレースとは言えませんが、であるからこそ、我こそはと挑戦するランナーが後を絶ちません。種目は「五合目コース」と「山頂コース」があり、「五合目コース」で基準タイムの4時間30分をクリアした者のみが「山頂コース」へのエントリー権を手に出来るというコンペティティブさも人気の理由。今年の開催は中止となってしまいましたが、毎年大人気のレースでエントリーはクリック合戦になっています。
富士登山競争
山を走るなら必須!山のマナーを知っておこう
町で赤信号では止まるように、山には山のルール・マナーがあります。美しい自然を守るために、また山で遊ぶみんなが安全に楽しい時間を過ごすために、予め基本的な山のルールを知っておきましょう。
人に出会ったら挨拶をしましょう
山では知り合いではないとしても、人に出会ったら「こんにちは」と元気良く挨拶をしましょう。これによってお互いが良い気分になるばかりではなく、お互いが異常なしであるという意思表示の表れになります。
人とすれ違う時は歩きましょう
山では片側が崖になった危ない場所もたくさんあります。万が一でも人にぶつかって誰かが滑落でもしたら大事故に繋がる危険性があります。また、ハイカーさんにとっては移動スピードが速いランナーは怖い存在です。人とすれ違う時やハイカーさんを追い越す時は10mほど前から走るのをやめ、歩くように心掛けましょう。
譲り合いの気持ちを忘れずに
トレイルでは人ひとりが通れるような狭い道があります。基本的には登りが優先とされていますが、それも状況によって様々。立ち止まって脇に避け「どうぞ」とお声掛けをすることでお互いが気持ち良く山を楽しめますよ。
トレイルから外れないようにしましょう
動植物を傷つけない為にも、トレイルを外れないようにしましょう。少しでも踏み跡が出来るとそこを他の人も通ってしまい、結果的に地面を硬くして植物が生えないようになってしまいます。
ゴミは必ず持ち帰りましょう
どんな小さなものだとしても、自分が出したゴミは必ず持ち帰るのが山の最低限のルールです。また自分のそれではなくても、ゴミを見つけたら積極的に拾って美しい自然を守るよう気持ちを持ちましょう。
自分の身は自分で守れるように装備はしっかりと
山は素敵な場所ではありますが、同時に危険もたくさん潜んでいます。トラブルで他人に迷惑を掛けないように、自分の身は自分で守れるような装備をして山に入りましょう。登山に適した道具がセットになった救急キットを持っておくと万が一の時に便利ですよ。
ITEM
ファーストエイドキット 携帯用救急箱
サイズ:17*12*6CM
重量:約150g
カラー: レッド
パッケージ内容:▲ハサミ×1▲ピンセット×1▲ガーゼ×2▲包帯×1 Spec(CM) 5cm*4.5m▲包帯×1 Spec(CM) 7.5cm*4.5m▲紙粘着テープ×1▲ヨードチンキ綿×4▲アルコール綿×10▲絆創膏×5▲三角巾×1▲安全ピン×2▲ポイズンリムーバー×1▲防災笛(アルミ製)×1▲説明書×1▲急救バッグ×1
▼山のマナーについては、こちらの記事も参考に
まずは近場の山を走ってみよう
撮影:鈴木すず
厳しさやルールもありますが、スカイランニングはとても自由で、雄大な自然を満喫できる素晴らしいアクティビティです。いきなりスカイランニングはちょっと……と思われる方は、まず近場の山を軽く走ってみてはいかがでしょうか。もちろん、辛くなったら休憩したり歩いたりしてOK。美しい景観を見ながら気持ち良い汗を流せば日頃のストレスもスッキリ。まずは無理をせずに自分の体力に合わせて山遊びを楽しんでみてくださいね。
スカイランニングをやってみたいと思ったら!こちらの記事も参考に
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