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峠走とは?
「峠走」と名前からきつそうな練習ですが、マラソンなどの長距離種目のパフォーマンスアップに効果があるトレーニングです。特徴を把握しておけば有効な練習メニューを組み立てられるでしょう。
まずは峠走がどのようなものか紹介します。
峠を往復するトレーニング
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「峠走」とは、峠の緩やかな坂を長い距離走るトレーニングです。坂ダッシュのように短い距離ではなく、ロングジョグのような長い距離(10km~30km)を走るのが特徴で、整備された峠道を往復します。
代表的なコースだと、箱根駅伝の5区と6区のような場所で、緩やかな傾斜がある道を走るため平地よりも体に負荷がかかりトレーニング効果が高いです。
上りと下りで効果が違う
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峠走は行き(上り)と帰り(下り)ではトレーニング効果が異なるのも大きな特徴です。つまり、往復することでさまざまな練習効果を得られるのです。
緩やかな坂であったとしても、上りも下りも長い距離を走るためマラソンなどの持久系種目のトレーニングに適しています。
上りと下りの詳しいトレーニング効果は次の項目で紹介します。
峠走のトレーニング効果【上り編】
峠走は上りと下りで効果が異なります。まずは上りのトレーニング効果について紹介します。
心肺能力の強化
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傾斜がある道は平坦のコースよりも心拍数が上がりやすく、峠まで長い上りが続くので心拍数が高い状態を長時間維持する必要があります。
そのため、平地で走るよりも心肺能力を高める効果があります。
脚力(推進力)の強化
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上り坂を走るときは、平地よりも脚の力を使います。これはお尻の筋肉(大臀筋)や太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)を使って、身体を持ち上げるからです。
大臀筋やハムストリングスは平地で走るときの「地面を押す」「地面を蹴る」筋肉でもあり、上り坂を走ることで筋力(脚力)が強化されます。
脚力が向上することで推進力が生まれやすくなり、インターバルやレペティションなどの速く走る練習を行ったときにでもスピードを出しやすくなるため、トレーニング効果が高まりやすくなります。
筋持久力の強化
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峠走の上りは下半身を中心に全身の筋肉を使います。それを長い距離走るため、持続的に筋肉に負担がかかり筋持久力の養成に繋がります。
筋持久力を高めることで、マラソンのレース終盤でも脚をしっかり動かすことができます。マラソンの30km以降に足が止まってしまうことを課題に感じている方は、峠走を練習に取り入れてみると良いでしょう。
峠走のトレーニング効果【下り編】
続いて、峠走の下りのトレーニング効果を紹介します。
スピードの強化(ランニングフォームの改善)
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坂を下るときは平坦の道よりも楽にスピードが出ます。このとき、平地や上りを走るときよりも大きなフォーム(効率良くスピードを出せるフォーム)になるため、スピードを出しやすいランニングフォームの獲得に繋がります。
楽にスピードを出せるフォームを獲得できれば、ランニングエコノミ―(ランニングの経済性)が向上して効率良く走れるようになるでしょう。
着地衝撃への耐性アップ
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坂を下るときは、平坦を走るときよりも大きな負担がかかります。この衝撃・負担を受けて体を支えているのが、主に太ももの前側(大腿四頭筋)です。そのため、下り坂を長時間走ることで大腿四頭筋が強化され、ランニング時の衝撃に耐えられるようになります。
マラソンは長い距離を走るため必然的に歩数は多くなり、地面から受ける衝撃も大きいです。着地衝撃への耐性不足は、30km以降に足が止まってしまう要因の1つでもあるので、下り坂を走ることでマラソン後半の失速を抑えられるでしょう。
峠走のおすすめコースを紹介!
峠走は近所に整備された道路がある山があれば実施できます。関東エリアにお住まいであれば、神奈川県に峠走のメッカであるコースがあるので紹介します。
ヤビツ峠(神奈川県)
【コース情報】
●最寄り駅:小田急線 秦野駅
●スタート場所:名古木交差点
●ランステ情報:ランステはないので、荷物は駅のコインロッカーに置いた方が良いでしょう。
●片道 約11.5km(往復 約23km)
●高低差:約670m
ヤビツ峠は神奈川県の西側にあるコースです。ランニングだけでなくロードバイクのヒルクライムの人気スポットでもあります。
最初の勾配は緩やかですが、徐々に勾配は上がってきます。ただし、急な坂はないのでランニングに適しています。
足柄峠(神奈川県)
【コース情報】
●最寄り駅:JR御殿場線 山北駅
●スタート場所:最寄り駅からすぐの「さくらの湯(山北町健康福祉センター内)」
●ランステ情報:「さくらの湯」を利用可能
●片道 約13km(往復 約26km)
●高低差:約650m
足柄峠も最初の勾配は小さいですが、次第に勾配が急になり後半は最大で15%ほどにもなるので、非常にきついコースです。
コース中に信号がほとんどないので、自分のペースで走りたい方に適しています。
峠走を行う際の注意点
峠走はメリットが多いですが、注意点もあるので実施前に把握しておきましょう。ここからは峠走で気をつけたいポイントを紹介します。
体の負担が大きいので短い距離から始める
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峠走は体にかかる負担が大きいトレーニングなので、無理なく走れる距離を設定することが大切です。もし、走力・脚力が足りていなければ、完走できないケースも十分に考えられます。
例えば、片道10kmのコースでも往復すれば20kmとなかなかの長距離となります。まずは、片道5km~7.5kmくらいの距離(往復で10km~15km)に設定するなど、無理せずにやってみると安心です。
車には十分注意する
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峠道は歩道がないことが多く、車との距離が近いため危険が伴います。また、時期によって交通量が増える場所もあるので注意が必要です。
例えば、山頂が観光地の場合だと、観光のハイシーズンは交通量が増えて危なくなります。他にも桜や紅葉などが綺麗なスポットも交通量が増えやすいので要注意です。
それ以外の時期でも霧が発生して視界が悪いと、交通事故のリスクも高くなるので走るときは車道にはみ出ないようにしましょう。
道路が凍結する時期も避ける
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冬の時期は道路が凍結する可能性が高くなり、平坦な道よりも滑りやすく危険性は高いです。
特に冬に走る場合は、前日の天気を確認して道路が濡れていないかチェックしたり、気温が高くなった時間帯を選んでみたりなど、工夫が必要です。
峠走の前にヒルトレーニングで準備しておこう!
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いきなり峠走を行うと、予想以上にきつくて満足に走れないケースがあります。筋力や心肺能力が足りていないだけでなく、勾配がある道を効果的に走れていない場合もあるでしょう。
坂道を走るときは、脚だけでなく全身の筋肉を使ってみたり、ストライドを小さくしてピッチ走法にしたりなど、自分に合った走り方を見つけることも大切です。
峠走の前に、近所の坂でヒルトレーニングを行っておくと、スムーズに峠走に移行できます。峠ほど長い距離が取れない場合でも、反復して走ることで近い効果を得られます。
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峠走はタイミングも大切!練習スケジュールの組み方
作成:記助
峠走は目標レースのあるシーズン中に行うと、疲労がレース本番に残ったり、故障してしまったりするリスクが大きいです。峠走を行うときは、スピードを追わず長い距離・長い時間を走る「走り込み期」に行うのが適切でしょう。
おすすめは走り込みをして体力が十分に高まり、スピード練習に移行する前の時期に行うことです。峠走で脚力を鍛えていれば、インターバルやレペティションなどでスピードを高めやすくなります。
峠走でレベルアップを図ろう!
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峠走は体の負担が大きい分、トレーニング効果が高い練習です。マラソンなどでタイムが伸び悩んだときにやってみると、課題克服に繋がる可能性があるのでおすすめです。
コースによっては景色が良くてリフレッシュになることもあるので、純粋にランニングを楽しみたいときにも良いですね。メリットと注意点を十分押さえて、峠走を是非やってみましょう。