アイキャッチ画像撮影:鈴木すず
New Balance(ニューバランス)が世界を狙うエリートランナーに向けて開発したレーシングシューズ、それが「FuelCell RC Elite v2(フューエルセル RC エリートブイ2)」です。いわゆる「FuelCell RC Elite」のバージョンアップモデルですが、FuelCellシリーズと言えば、史上最強のジョグシューズと話題になった「Fuelcell Rebel V2(フューエルセル レベル ブイ2)」が記憶に新しいところ。そしてこちらは、それにカーボンプレートを搭載した高速モデルになります。
「今からだって、速くなる」のコピーを掲げる本モデルの実力や如何に。トラックレースからウルトラトレイルまで走り、年間数十足ものシューズを購う筆者が徹底レビューします。
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「FuelCell RC Elite v2」の特徴を解説
箱を開けた時、まず目に付いたのは非常にボリュームのあるミッドソールでした。そして手にした時の印象としては、レーシングシューズにしてはそこまで軽くはないなということ。パッと見の印象は上記でしたが、神は細部に宿ると言われます。ではニューバランスの最新テクノロジーが詰め込まれた本作には、他にどんな特徴があるのでしょうか。ディテールごとに見ていきましょう。
大きめの孔が空いたニットアッパー
撮影:鈴木すず
アッパーは、前作のメッシュからエンジニアードメッシュにチェンジ。ソックスが透ける程の大きめな孔が随所に空いており、通気性の高さが期待出来ます。ちなみにエンジニアードメッシュとは、一枚の生地の中で編み方を変える手法。本モデルでは、前足部分は編みを粗くして通気性を高め、逆にソール周りや履き口、ヒール部分は編みを細かくする事でホールド感を高めています。
大胆にあしらわれた3Dプリント
撮影:鈴木すず
内側と外側に配置された3Dプリントのロゴは、デザイン性だけではなくアッパーの不要な伸びを抑えるサポート効果も兼ねています。
ボリュームのあるミッドソール
撮影:鈴木すず
踵部分の厚みは39mm(筆者計測)。前作よりも7mm厚めにする事で、よりクッショニングを強化しています。注目すべきは、この39mmという数値が、公認レースにおけるワールドアスレティックス規則の「ロード競技は40mm以内」にギリギリ収まるそれであるという事。この厚みにより、もちっと柔らかい接地と反発性の高い蹴り出しを実現し、同時に足のダメージを軽減する事で、レース後半でも快適な走りをサポートしてくれるのです。
耐久性の高いアウトソール
撮影:鈴木すず
前作では「DYNARIDE(ダイナライド)」と呼ばれる凹凸のあるチップが前足部に配置されたアウトソールを使用していましたが、本作ではFuelcellフォームの反発を活かしながらも耐久性の高いラバーアウトソールを採用。グリップ性は若干弱くなりましたが、そのぶん蹴り出しがナチュラルになり、脚の疲労が溜まりにくい仕様にシフトしています。
また、随所に孔を空けることで軽量化も図るなど、パフォーマンス性を追求したデザインに仕上がっている事にも注目です。
ソール中央の窪みから覗くカーボンプレート
撮影:鈴木すず
ソールの中央部分に配置された窪みからカーボンプレートが覗きます。これをつま先から踵までに内蔵させる事で、強烈な推進力を実現。蹴り出しに際してグイっと高いエネルギーリターンを叶えてくれます。
気になる重量はどれくらい?
撮影:鈴木すず
重量を測ってみたところ、 片方228gで(28cm/ワイズDで計測)の重さでした。昨今のレーシングモデルとしては軽いとは言えません。これは恐らく、Fuelcellという素材を活かしたミッドソールの厚みや3Dプリント、またホールド感を強めたヒールカップなどにより、軽さよりも安定性を重視したからだと推測されます。この重さが、ランニング時にどのような影響を及ぼすのでしょうか。数値にピンと来ない方は、ナイキの「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%(以下ヴェイパーフライ)」が同じ28cmで200gであることを考えると、イメージが湧くと思います。
【実走レビュー】ペースを分けて走ってみた
筆者の足のサイズは足長27.4cm、足幅は標準を意味するEで甲の高さも標準、指先の形は人差し指が一番長いギリシャ型で、普段ナイキは28.5cm、アシックスの「ノヴァブラスト」は28cm、「メタスピード スカイ」は28.5cmを履いていますが、本作は28cmのワイズDでジャストサイズでした。足入れした時の印象は「Fuelcell Rebel V2」と大きく変わらず、Fuelcellシリーズの特性であるもっちりとしたクッショニングを実感。いつものようにペースを変えて走ってみました。
サブ4(5:41/km)〜サブ3.5(4:58/km)ペース
撮影:鈴木すず
まずは5:41/kmで5km程走ってみましたが、もちっもちっとした足に優しい柔らかさとパンッパンッという地面からの返しはあるものの、期待する程の促進力は実感出来なかったのが正直なところ。確かにスピードは出やすく、無意識にペースが上がってしまう感覚はあるのですが、「ヴェイパーフライ」のような強く前方に弾き出されるような驚きはありませんでした。そのまま4:58/kmにペースを上げてみましたが、その印象はさほど変わらず。
サブ3(4:15/km)ペース
提供:牧野英明
最後に4:15/kmにペースを上げて走ってみましたが、それでも大きな変化は感じられませんでした。もちろんカーボン無しのシューズに比べると、推進力はあります。スイートスポットも広く、フォアだけでなくミッドフットで接地でもカーボンプレートの恩恵を感じられるのはこのシューズの美点と言えるでしょう。また、Fuelcellフォームによるクッショニングが奏功してか、足への疲労感はいつものより少なく感じました。
しかし真剣にタイムを狙いたいフルマラソンでこのシューズを履くかと聞かれたら、筆者の答えはノーになるかも知れません。参考までに、筆者の走力はフルマラソン3時間17分、ハーフは1時間30分程です。
「このシューズは3:00/km付近でガラッと性格が変わる」サブエガランナー牧野英明氏の声
上記の通り、筆者の走りではこのシューズのポテンシャルを引き出せませんでした。そんな中、サブエガ(フルマラソンを2時間50分以内で走る)ランナーの牧野英明氏による興味深い本作のレビューを目にしたので、詳しく話を聞いてみました。
提供:牧野英明
牧野英明さん プロフィール
セレクトショップディレクター。ランニングインストラクターの資格を持ち、自身も市民アスリートとして日々鍛錬に励む。フルマラソンのPBは2:49:01(東京マラソン2019)。全日本マスターズ選手権M35 1500m 6位入賞。日本人離れしたスタイルとファッションセンスで着こなす「いつでも10km走れるコーディネート」は、各媒体でも話題に。
このシューズを履いて、最初に4:00/kmくらいで20km走ったときは、正直あまり良い印象じゃなかったんです。ちょっと重いしカーボン感もあまり感じないし、ミッドソールの反発も驚くほどではないし。けど先日、ニューバランスが主催したバーチャルレース「TAMAGAWA FKT by Riverside Micro Race」で1,600mを3:00/kmくらいのハイペースで走った事により、第一印象からガラッと性格が変わりました。
提供:牧野 英明
具体的に言うと、ミッドフットで足裏全面、ヒールを意識的に強めに踏みつけたときに、びっくりするくらい反発してスピードが出せたんです。つまりフォアフットでちょこちょこ回すより、思い切ってビタッと足裏全体で地面を叩く走り方にした方がこのシューズとの相性はいいのかな、と言うのが個人的な感想。
そして以前はちょっと重めに感じた重量も、スピードを出した時になって初めて程良い遠心力となってケイデンス(ランニングにおける1分間あたりの足の回転数)を助けてくれた印象です。マリオカートのドンキーコングよろしく、ちょっと重量あるけどスピード乗ったら速いぜ、って感じですかね。うん、めちゃアリですよ、このシューズ。
【結論!】「FuelCell RC Elite v2」はどんな走りにフィットする?
撮影:鈴木すず
同じシューズでも、履く人の走力やレースによってその印象は大きく変わってくるもの。未だナイキ一強のレーシングシューズ市場ですが、体型や走力、その走り方が千差万別である以上、そもそも一つのモデルが全てのランナーにベストフィットする筈はないのです。牧野氏は1,600mにマッチした本作ですが、3:00/kmの走力を持たない筆者としては、100kmなどのウルトラマラソンで本作を履いてみたいな、と。走力によってフィットするレースが変わってくる「FuelCell RC Elite v2」、皆さんならこのシューズでどんなレースを走りますか?
〈商品詳細〉
商品名:FuelCell RC Elite v2(フューエルセル RC エリート ブイ2)
価格:28,600円(税込)
サイズ:MEN/25.0〜29cm(ワイズDと2E有り)、WOMEN/22.0〜25.5cm
New Balance オフィシャルサイトFuelCell RC Elite v2 【メンズ】を購入FuelCell RC Elite v2 【ウィメンズ】を購入
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