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サブエガとは?
サブエガという言葉は、マラソンを走らない人やマラソンに取り組み始めたばかりの人には、聞き慣れない言葉なのかもしれません。なぜならサブエガは、マラソンランナーが目指す目標の中で、かなりハイレベルな目標だからです。
サブエガという言葉を知っている人は、マラソンランナーの中でも、上位タイムを狙って走るのを目標としているランナーではないでしょうか。
フルマラソンを2時間50分切りで完走すること
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サブエガとは、フルマラソンで2時間50分を切ることをいいます。
「サブ」には「下(した)」という意味があり、フルマラソンは「サブスリー(3時間切り)」や「サブフォー(4時間切り)」など、30分毎のタイムが「サブ●●」として目標の基準になっています。
しかし、サブエガには数字ではない「エガ」という単語が使われているので、何のことなのかわからない人もいるかもしれません。「エガ」とは、お笑い芸人の江頭2:50さんを連想して名付けられたもので、2時間50分より短いタイムで走ることをサブエガと呼んでいます。
サブエガ達成はランナーの上位3%未満
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マラソンを走る人は多くなりましたが、その中でサブエガを達成しているランナーは、非常に限られています。
国内マラソン大会の完走記録を集計した『全日本マラソンランキング』(2018年4月~2019年3月)によると、サブエガ(2時間50分)の近似値である2時間45分を切ったランナーは、男性0.8%・女性0.1%、3時間を切ったランナーは男性3.1%・女性0.4%でした。
すなわち、男性であれば上位3%~1%に、女性は上位0.4%~0.1%に入れるランナーでなければサブエガを達成していないため、サブエガは大変難易度の高い目標といえるのです。
サブエガを達成するためには何が必要?
では、サブエガを達成するためには何が必要なのでしょうか。ここからは、サブエガ達成に向けたペース配分や走り切るために必要な走力についてお伝えします。
「4:01/km」を維持するスピード持久力
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サブエガを達成するためには、1kmあたり4分1秒のペースを保ちながら42.195kmを走る必要があります。
しかし、後半ペースが落ちることを考えると、前半はキロ3分台(3:50〜3:55/km程度)のペースで走ることも想定するべきです。もっともペースが落ちたとしても、キロ4分前半のペースは維持しないといけません。
キロ4分で42.195kmを走り切るには、「スピード持久力」が必要です。また、スピードを維持する脚力だけでなく、硬いロードに耐えられる脚の強さ、ハイペースを維持して走るための心肺能力も必要です。
これらを練習で身につけるためには、単にジョグのスピードを速めて走るだけでなく、きちんと考えられた練習メニューを組み立ててこなしていく必要があります。
サブエガ達成に向けた練習法を紹介!
では、サブエガを達成するための練習は、どのように考えればいいのでしょうか。ここからは、42.195㎞を走り切れる「スピード持久力」や、脚・身体の強さを身につけるための練習のポイントをお伝えします。
月間走行距離は最低でも「250~300km」を目安に
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まずは月間走行距離について、サブエガを達成するランナーはどのくらい走っているのか見てみましょう。
「ランナー世論調査2015」によれば、男性であれば3時間切りの場合250km以上、女性であれば300km以上の練習を20ヵ月以上行っているランナーが多い傾向にあります。
また別のデータを見ると、「ロンドンマラソン2016」の完走者のビッグデータを解析したところ、3時間を切るのであれば月間268km以上を28ヵ月に渡り走っている、という結果が出ています。
つまり、サブエガを出すには、おおよそ最低でも250~300kmもの月間走行距離を、1年半以上に渡ってトレーニングする必要があるといえます。ただし、これはあくまで基本的な量。単純に300kmを1か月で割ると、1日あたり10㎞です。その距離を走ればサブエガが達成できるか、といえば、そうではありません。
目標は42.195kmを走り切ることにあるので、その距離に慣れるということであれば、レース6ヵ月前~3ヵ月前の走り込みの時期には、週1回は40km走などのロングジョグを入れるべきでしょう。そうすると、走り込みの期間は、必然的に月間300~400km程度は越えていきます。まずは、十分な距離の走り込みを継続的に行う必要があります。
「閾値走」でスピード持久力を養う
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サブエガを狙うマラソンランナーにとって、大事な練習のひとつが「閾値走(いきちそう・しきいちそう)」です。
閾値走とは、長距離を走れるマラソンペースよりも速く、「これ以上走ったら足が重くなる」というギリギリのペースで走る練習です。主に乳酸除去能力を向上させることができます。
マラソンでよく「30kmで足が止まる」ということがありますが、これは体の糖質(=グリコーゲン)が枯渇することで起こります。マラソンでは「いかに糖質の消費を節約して走るか」がポイントとなります。「糖質を多く消費し始める」タイミングが、「乳酸が多く発生し始める」閾値(LT値)であり、閾値走によってこの閾値を高めることで、マラソン中の糖質消費を少なくし、マラソン後半の失速を防ぐことができます。
■実施方法
では、閾値走でどのくらいのペースで走るかというと、「練習時に20~30分間継続できるくらいのペース」です。
具体的なペースについては、ジャック・ダニエルズの「自分の過去や直近のレース結果から走力を把握するためのVDOT値の表」を、参考にするといいでしょう。
その表によると、サブエガペースの走力のあるランナーにとって閾値走のペースは、キロ3分33秒程度です。このペースで8~9kmを「後半少しきつくなる」感覚で走り切れるように、トレーニングを行います。
■実施頻度
後述のポイント練習も含めて月間300kmを走れるようになったら、閾値走を週2~3回程度入れていきましょう。当然最初は3分33秒のペースはきついでしょうが、慣れてくると楽になってきます。
最初は週1回程度にしておき、レースの3ヵ月~2週間前まではポイント練習を閾値走に切り替えて練習しましょう。
ちなみに閾値走によって減った週の走行距離は、週末にロングジョグ(ゆっくりペース)を行い、長い距離を走ることに慣れるための練習に生かすといいでしょう。
▼「閾値走」についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめ!
初期段階で「インターバル走」や「坂道走」を取り入れ、脚と心肺能力を作る
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マラソン練習ではインターバル走や坂道走といった、ある程度心拍数を上げ乳酸の閾値で繰り返し走るトレーニングも効果的です。こうした練習は、心肺能力の向上に役立つので、マラソンのような距離の長いレースに向けた練習でもぜひ取り入れたほうが良いです。特に閾値走を取り組む前、マラソン練習の初期段階で行うことが多いです。
■実施方法
インターバル走のペース設定については、ジャック・ダニエルズの「VDOT値に見合った各運動強度の練習ペースの表」が参考になります。これによると、最大酸素摂取量(VO2Max)の向上に役立つペース(Iペース)について、サブエガのペースだとキロ3分30秒を切るペースです。このペースで1000mを5~10セット走ります。セット間のレストには200m程度のジョグを挟みましょう。
■実施頻度
週単位のスケジュールの中で2日程度、ジョグの合間のポイント練習としてインターバル走や坂道走を入れると、ハイスピードで走る心肺能力もできてくるため、その後の閾値走に練習が移行した際、比較的楽にこなせるようになります。
閾値走もインターバル走、坂道走も、重要なことは、身体の能力アップもさることながら練習をこなした、という達成感だと思います。それは、一つ一つの練習を達成していくことで、マラソンをハイペースでも走り切る自信に繋がるからです。
ただし、練習をしすぎて、無理をするとケガをしますので、足のケアは怠らないようにしましょう。
▼「インターバル走」についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめ!
サブエガを目指すランナーにおすすめのシューズ3選
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サブエガを狙う人がシューズ選びで意識すべきポイントは2つあります。それは「蹴り出しの反発性」と「通気性・フィット感」です。サブエガを達成するためには、距離を完走するだけでなくスピードが重要です。蹴り出しの反発性があるシューズで走ると、スピードに乗ってスムーズに走ることができます。また、通気性・フィット感は、3時間弱の長いレースを、ムレずに快適を保ちながら走るために重要な要素です。
それでは上記のポイントを元に、おすすめシューズを3つご紹介します。
アシックス「SORTIEMAGIC RP 5」
アシックスの「SORTIEMAGIC RP 5(ソーティマジック RP 5)」は、駅伝やロードレースを走る、学生ランナー向けに開発された競技用マラソンシューズです。
スピードを持って走ることを想定し、軽量化や通気性、耐久性、フィット感などにこだわって作られており、サブエガを目指すランナーにぴったりのシューズであるといえます。
特徴としては、中足部に設置された高剛性トラスティック材「PEBAX」で、ねじれを押さえつつ蹴り出したときの推進力を生み出している点。蹴り出しの際に、よりダイレクトかつ優れた反発性を得ることができ、スピードに乗って走ることができます。
また、ミッドソールにも前足部に反発性素材「FLYTEFOAM PROPEL」、つま先と後足部に軽量性素材「FLYTEFOAM」が採用され、高い反発性と軽量性を実現しています。
アッパーのメッシュ素材で通気性とフィット性も確保されており、長い距離を走ってもムレを防ぐことができます。
ITEM
アシックス SORTIEMAGIC RP 5
●カラー:エレクトリックブルー×ホワイト 他
●サイズ:22.5〜29.0cm
●素材:・アッパー/本体 合成繊維製・補強/人工皮革製・ソール:合成底(ウレタン)+ ゴム底・アウターソール ゴム底
ナイキ「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2」
ナイキの話題の厚底シューズ『ヴェイパーフライ』シリーズから登場した『ヴェイパーフライ ネクスト% 2』。
マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ選手が、NNミッション・マラソンで、2時間4分30秒の好記録を出したときに、このシューズを履いていました。
ヴェイパーフライ ネクスト% 2の特徴は、まずミッドソール全面に敷かれたカーボンファイバープレートでしょう。このプレートが、ヴェイパーフライ ネクスト% 2の強力な推進力を生み出し、スピードを後押しします。
また、ナイキの最強素材ともいわれるZoomXフォームは、かかとからつま先まで配置され、着地のたびに抜群のばねを生み出します。これも強力な反発力を生み出している要因です。
アッパーに搭載されたメッシュは、抜群の快適性と通気性を確保しながら、抜群のフィット感があります。
ITEM
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2
●サイズ:24.5~30.0㎝
●カラー:ホワイト/メタリックシルバー/ブラック、フラッシュクリムゾン/ノーブルレッド/ブラック/ピュアプラチナム、グレイシャーブルー/チリレッド/ペールアイボリー/ブラック
ミズノ「ウエーブエンペラー3」
ミズノの「ウエーブエンペラー3」は、「圧倒的に速く走りたいランナーのために」を念頭に開発されたシューズです。高いグリップ性、反発力を網羅しつつ、フィット感向上のための機能が搭載されています。
まず、ミズノ独自の技術である「ミズノウエーブ」によって、長い距離を走っても衝撃から足を守ってくれるクッション性と、接地や蹴り出しの時の安定性を両立させています。
その上で、独立補強構造が踵部分の高いフィット感を生み出し、さらにシューレースホール部をつま先方向に長く設計することで、より足幅に合わせたフィット感の調整を可能としています。
また、ウエーブエンペラー3は9mmのドロップ(つま先側とかかと側の高低差)を採用しています。ミズノの調べによると、走力にあわせた最適なドロップのシューズを選択することによって、より効率的に走ることができ、1キロ4~5分のタイムで走る人に適したドロップは、この9mmとのこと。まさにサブエガペースで走る人向けのシューズといえるのではないでしょうか。
ITEM
ミズノ ウエーブエンペラー3【メンズ】
●サイズ:24.5〜29.0cm
●カラー:レッド×ホワイト×ブラック、ブラック×シルバー×レッド、ホワイト×ブルー
ITEM
ミズノ ウエーブエンペラー3【レディース】
●サイズ:22.0〜26.0cm
●カラー:ブルー×ホワイト
適切なトレーニングを積んで、サブエガという高みに登ろう!
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マラソンを走るランナーにとって、サブエガは、サブスリーを達成した後のさらなる高みです。大学や実業団で走ったことのない市民ランナーにとっては、未知の領域といっても過言ではないでしょう。
しかし、2時間半を切るといったレースの上位を狙うような記録ではないので、継続した走り込み、質の高いポイント練習など、サブエガを意識した練習を行えば、実は達成できないレベルではありません。
マラソンは練習の成果が如実に出てくるスポーツなので、サブスリーを達成した方は、ぜひ次なる高みを目指してみましょう!
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