アイキャッチ画像撮影:鈴木すず
数多のスポーツメーカーがカーボンプレートモデルを発表した2020年、adidas(アディダス)は「5本指カーボン」と称されるカーボンバー「EnergyRods (エナジーロッド)」を搭載した「ADIZERO ADIOS PRO(アディゼロ アディオス プロ)」をリリース。バレンシアハーフマラソンにおいて、このモデルは57分32秒という驚異的なタイムで男子世界記録を更新したK.カンディエ(ケニア)の足元を支え、レーシングシューズ市場で話題を呼びました。その実績もさることながら、まるで足の骨のようなそのカーボン形状に食指が動いたランナーも多かったのではないでしょうか。
本記事でレビューする「ADIZERO ADIOS PRO 2.0(アディゼロ アディオス PRO 2.0)」は、そのアップデートモデル。「爆速」というキャッチコピーを標榜した本作は、果たして前作からどのような進化を遂げたのでしょうか?そしてその実力は?トラックレースからフルマラソン、ウルトラトレイルまで走り、年間数十足ものシューズを購う筆者が徹底レビューします。
「アディゼロ アディオス PRO 2.0」の特徴を解説
最初に目に付いたのは、シアー(透け感のある)なアッパーとエナジーロッドが覗くソールです。重量としては、28.5cmで250gで前作よりも12g軽量になっています(筆者実測値)。とは言うものの、ナイキの「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%が同じ28.5cmで205gである事を加味すれば、昨今のレーシングシューズとしては軽い部類には入りません。しかしながら、普段の練習ではより重いシューズを履いているせいか、着用してみるとその重量はさほど気にはなりませんでした。他にはどんな特徴があるのでしょうか?それでは早速ディテールから見ていきましょう。
進化したアッパー素材
撮影:鈴木すず
アッパー素材には、前作で使われていた同ブランド最薄最軽量のリサイクルポリエステル製メッシュを、より軽く、より薄く進化させた「セラーメッシュ 2.0」を採用。アッパーの一部にはリサイクルポリエステルを使用し、企業としてサステナブルを意識した姿勢も評価ポイントと言えます。また水分も含みにくいので、雨の日のレースにも◎。一方、前作よりもホールド感は弱く感じますが、柔らかいので足馴染みは良さそうです。
グリップ力と耐久性の高いアウトソール
撮影:鈴木すず
前足と踵部分には、自動車や自転車のタイヤなどに使われているコンチネンタル社製のアウトソールラバーを採用。そして爪先にはより厚めのラバーが付いています。また、前作ではフラットなアウトソールでしたが、本作ではパンチングを施す事でよりグリップ性を向上させています。
可視化されたエナジーロッド
撮影:鈴木すず
中足部分が深くえぐられ、5本中3本のエナジーロッドが覗いています。また、足の自然な動きを損なわずに推進力を生み出せるよう、エナジーロッドはパーツごとに硬さが調整されています。
しなやかなクッション性を持つミッドソール
撮影:鈴木すず
ミッドソールには、前作から引き続き「LIGHTSTRIKE PRO(ライトストライク プロ)」が採用されています。そのモチモチとした強い反発性は、足入れした瞬間から感じられるほど。また、前作ではミッドソールの上下が一体化していましたが、本モデルでは中足部が内側にえぐられ、2層に分かれたような見た目になっています。ちなみに踵部分の厚みは39mmなので、国際陸連の基準である「40mm以内」もきちんとクリアしています。
日本人にフィットする丸みのあるラスト
撮影:鈴木すず
前足部には丸みを持たせ、ナイキやホカ オネオネのシューズでは狭さを感じる人にもフィットする幅広めのラストになっています。
足によく馴染む履き口周り
撮影:鈴木すず
シュータンや履き口周りに使われた素材は非常に柔らかく、足馴染みの良さを実現。そうでありながらも、踵部分にはパッド的な補強素材を充てて、安定性はしっかりとキープしています。
気になるサイズ感は?
撮影:鈴木すず
筆者の足のサイズは足長27.4cm、足幅は標準を意味するEで甲の高さも標準、指先の形は人差し指が一番長いギリシャ型で、ナイキは28.5cm、アシックスの「ノヴァブラスト」は28cm、「メタスピードスカイ」は28.5cm、ホカオネオネのロードシューズは28cmを履いています。本モデルは28.5cmで爪先にやや余裕がありましたので、いつもより0.5cm下げても良いかも知れません。また、ニットアッパーのようにぴったりとフィットすると言うより全体的にゆとりがあるので、シューレースで柔らかいアッパーを調整するような感覚です。
【実走レビュー】ペースを分けて走ってみた
撮影:鈴木すず
上記のディテールがどんな走りを生み出すのでしょうか。サブ4(5:41/km)→サブ3.5(4:58/km)→サブ3(4:15/km)→ラスト2kmをフリーと、ビルドアップで走ってみました。
サブ4(5:41/km)〜サブ3.5(4:58/km)ペース
まずは6kmほどジョグでアップした後、サブ4ペースからサブ3.5ペースで各3kmずつ走ってみました。しかしその感覚は、このペース差ではさほど変わらなかった印象。フォームの反発と爪先を反り上げたガイドソール構造が合わさり、スピードを出さずともナチュラルに前方へ推進される感覚を味わえました。また、内側にえぐられたソールの形状がそうさせているのか、蹴り出しもかなりスムーズ。レース終盤での疲労を軽減してくれそうな手応えを確かに感じます。
サブ3(4:15/km)ペース
少しフォアフットでの接地を意識してペースを上げてみたところ、サブ4ペース〜サブ3.5ペースの時よりも強い推進力を感じる事が出来ました。しかしながら、それはナイキの「ヴェイパーフライ」のように明らかにカーボンを感じるバネのようなそれではなく、より癖が無く操作性の高いもの。ただ「ヴェイパーフライ」の強反発に慣れてしまった人には、ちょっと物足りなく感じるかも知れません。
フリー1km(3:48/km)ペース
インプレッションが大きく変わったのはここ。ラスト1kmでペースを気にせず、よりスピードを上げて走ってみた時でした。サブ3ペースよりもフォアフット接地を強く意識してみると、エナジーロッドに重心が乗ってグイグイと前に押し出される感覚があります。本モデルのポテンシャルを最大限に引き出すには、このペースでフルマラソンを走りきれる走力が要求されるのかも知れません。フルマラソンPBが3時間17分の筆者が履きこなすには、ちょっと難しいシューズだと感じました。
【結論!】「アディゼロ アディオス PRO 2.0」で速くなれるのか?
撮影:鈴木すず
アディダスの最新技術が注ぎ込まれ、世界記録を塗り替える為に開発された「アディゼロ アディオス PRO 2.0」。確かにLIGHTSTRIKE PROのクッション性と反発性は、あらゆるランナーが感じる事が出来るでしょう。しかしながら、「爆速」を掲げるそのポテンシャルを100%引き出すには、サブエガ(フルマラソンを2時間50分切りで走る)以上の走力が必要であると筆者は結論付けます。
ただ履きこなすのが難しい反面、それが出来た時のスピード感はかなりのもの。我こそはという俊足ランナーには、勝負レースにおける一つの選択肢として大いにありな逸品であることは間違い無さそうです。
<商品詳細>
商品名:アディゼロ アディオス PRO 2.0
価格:28,600円(税込)
サイズ:22.0〜31.0cm
ミッドソールドロップ:10 mm (ヒール:39.5 mm / 前足部:29.5 mm)
adidasオフィシャルサイト
ITEM
adidas/アディゼロ アディオス PRO 2.0 UNISEX
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