タイムアップのカギは酸素が握る?マラソンランナーの指標になる【VO2max】とは

近年、マラソンを走るランナーの間で「VO2max」という指標に注目が集まっています。VO2maxとは、身体が1分間に取り込める最大の酸素量を表します。マラソンのような持久力を求められるスポーツでは、VO2maxが高ければ高いほど、良いパフォーマンスを発揮できます。また、VO2maxを計測すればフルマラソンのタイムも予測できるとさえ言われています。この記事では、VO2maxの測定方法やマラソン予想タイムの出し方を解説します。VO2maxを向上するためのトレーニング方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

記事の目次

  • VO2maxって何?
  • あなたのVO2maxは高い?低い?目安となる基準とは
  • VO2maxはどうやって測る?
  • VO2maxを向上させよう!おすすめのトレーニングメニュー
  • VO2maxを高めてワンランク上のランニングへ

アイキャッチ画像出典:PIXTA

VO2maxって何?

私たちが運動する時、体内に酸素を取り込み、その酸素を使って糖質や脂質を分解し、エネルギーに変えています。つまり、酸素は運動時にとても大切な役割を担っているのです。この酸素に着目し、運動の指標として用いられているのがVO2maxです。

「V(Volume):量」+「O2(Oxygen):酸素」+「max(maximum):最大」

全力疾走をする女性ランナー

出典:PIXTA

VO2maxとは、V(Volume)+O2(Oxygen)+max(maximum)の略で、1分間あたりの「最大酸素摂取量」を表します。運動中に呼吸によって体内に取り込む酸素の最大量を表す数値で、単位はml/kgです。

 

自動車でも排気量が大きい(=多くの酸素を取り込める)車の方がよりパワーがあります。同じように、VO2maxの数値が高ければ高いほど、体内に多くの酸素を取り込むことができるので、より多くのエネルギーを生み出せることになります。

VO2maxはマラソンにも重要な指標

マラソンのトレーニングをするランナー

出典:PIXTA

VO2maxの値は、特に有酸素運動のパフォーマンスに大きく影響してきます。たくさんエネルギーを生み出せるということは、それだけ長く運動できるということになります。瞬発力よりも持久力が必要とされるマラソンでは特に重要な数値です。

 

また、一般的にVO2maxが高くなると乳酸への耐性も高まるとされています。簡単にいえば、乳酸がたまって運動できなくなることを遅らせることができるので、長くパフォーマンスを保つことができるのです。

あなたのVO2maxは高い?低い?目安となる基準とは

VO2maxはあまり聞き慣れない数値なので、基準がわかりにくいかもしれません。厚生労働省では、VO2maxの目安となる基準値を年齢別・性別に発表しています。

基準値は厚生労働省の「健康づくりのための運動基準2006」

健康促進を目指して走る女性

出典:PIXTA

厚生労働省が2006年に発表した「健康づくりのための運動基準2006」の中で、VO2maxの性別・年齢別の基準値を発表しています。これは、厚生労働省において調査した結果を元に、健康を維持するために必要な基準値として設定されています。

 

体力向上や生活習病予防のために必要とされる目安ですが、普段から日常的に運動をされている方であれば、十分クリアしているでしょう。

 

〈健康づくりのための性・年代別の最大酸素摂取量の基準値〉

【単位】ml/kg

20代 30代 40代 50代 60代
男性 40 38 37 34 34
女性 33 32 31 29 28
出典:厚生労働省『健康づくりのための運動基準 2006』を元に作成

このデータからVO2maxは若い時に高く、加齢とともに低下していくことも読み取れます。

プロアスリートは70ml/kg以上

アスリート シリアスランナー

出典:PIXTA

先に上げた表では、男性のVO2maxは40ml/kg前後、女性では30ml/kg前後となっていましたが、プロのアスリートでは70ml/kg以上、オリンピックなど世界レベルのアスリートになると80ml/kg以上になると言われています。

 

男性の平均的な数値の実に2倍と、身体能力の高さが数値でも証明されたことになります。

マラソン完走タイムの目安にもなる

マラソン大会で走るランナー

出典:PIXTA

1983年にフォスター氏が発表した公式を用いることで、VO2maxの数値から、フルマラソンの完走タイムを予測することができます。

 

マラソンタイム(分)=435.58-3.85×VO2max

 

この公式から、マラソンの目標タイムに必要なVO2maxを計算してみました。多くの方が目標の目安としているサブ5〜サブ3を基準にまとめたのが次の表です。

 

フルマラソンタイム VO2max(ml/kg)
5時間00分00秒 35.2
4時間30分00秒 43.0
4時間00分00秒 50.8
3時間30分00秒 58.6
3時間00分00秒 66.4

 

もちろん、VO2maxだけで目標のマラソンタイムを達成できるとは言い切れません。また、最近の見解では、この公式で予測したタイムよりも20分前後速いタイムで完走している人が多いとも言われています。あくまで一つの目安として参考にしてみてください。

VO2maxはどうやって測る?

基準がわかれば、次に気になるのは計測方法でしょう。本格的に調べるには大掛かりな機材などが必要ですが、身近な方法で計測することも可能です。ここでは、VO2maxの測り方を具体的に紹介します。

トレッドミルやエアロバイクと専用の機器で計測

ランニングマシン 女性ランナー

出典:PIXTA

VO2maxを計測する一般的な方法はトレッドミルやエアロバイクを使う方法です。専用のマスクを装着して運動中の吸気を採取し、専用の分析機器でVO2maxの値を算出します。

 

専用の機器が必要になるので個人で計測するのはなかなかハードルが高いのですが、アシックスがプロデュースするスポーツ施設、スポーツコンプレックス(東京 豊洲)では、VO2maxの測定を行っています(有料)。気になる方は一度チェックしていてはいかがでしょうか。

アシックス スポーツコンプレックス公式HP

12分間走で計測する方法

トラックで距離を計測しながら走る女性

出典:PIXTA

専用の機械を使わずに、身近な環境で実施できるのが「12分間走」です。12分間走とは、アメリカ軍の軍医だったケネス・クーパー博士が考案したクーパーテストと呼ばれる方法です。やり方は非常にシンプルで、フラットなトラックなどを使い12分間にどれだけの距離を走れたかを計測します。

 

12分間走を実施したら、以下の計算式に当てはめます。

 

VO2max =([12分間走の走行距離(m)]-504.9)÷44.7

 

もし12分間走で2800m走れた場合、VO2maxは51.3になります。

 

先ほど紹介したフォスター氏の公式にも当てはめてみると、フルマラソンの完走タイム予測は、3時間58分2秒となります。もちろん、ランナーそれぞれの資質があり、12分間走で2800m走れたからといって必ずサブ4を達成できるというわけではありません。しかし、定期的に12分間走を行い、持久力がどれくらい向上しているのかを確認することは、練習のクオリティを上げるためにも有効です。

GPSランニングウォッチで推計する方法も

ランニングウォッチを確認する女性

出典:PIXTA

もっと手軽にVO2maxを測定したいのであれば、GPSランニングウォッチを利用する方法があります。

 

ランニングウォッチの中には、VO2max測定機能を搭載したモデルがあり、腕に装着して走るだけで測定が可能です。本来であればVO2maxを計測するには吸気を採取する必要がありますが、スピードとVO2max、そして心拍数はほぼ比例関係にあるので、スピードと心拍数から逆算してVO2maxを推計しているようです。

 

精度という面では専用の計測機器を使用する場合に及びませんが、目安としてとらえれば有効でしょう。

 

ITEM
ガーミン フォアアスリート235J
●本体サイズ: W45 × H45 × D11.7mm
●重量: 約42g
●カラー:3色

ガーミンのForeAthlete 235JはVO2max測定機能を搭載したタイプでは最もベーシックなモデルです。操作はシンプルで直感的に使用できます。正規の価格でも税別で2万円台と最初のGPSウォッチとしてもおすすめです。

 

また、ガーミンにはVO2maxの値をもとにフルマラソンの完走タイムを予想してくれる機能もあります。ガーミンのVO2max自体が推計なので実際のタイムよりも速い完走タイムが出ることが多いようですが、そこは「伸びしろ」ととらえて目標タイムに設定してみてはいかがでしょうか。

VO2maxを向上させよう!おすすめのトレーニングメニュー

運動生理学の専門家イアン・クレイン氏(米オハイオ大学)によれば、VO2maxの数値を向上させるためには強度の高い運動を短時間続けるのが効果的とのことです。具体的なトレーニング方法として800メートルから3000メートルの全力疾走が例として挙げられていました。この点を踏まえたトレーニング方法を紹介します。

トレーニング①:インターバルトレーニング

インターバルトレーニング ランナー

出典:PIXTA

スピード走とゆっくりペースのジョグをセットで行うインターバルトレーニングは、VO2maxのためにも最適です。

 

もっともポピュラーなやり方としては、1000mをレースペース以上で走った後、3分間のゆっくりジョグでリカバリーします。これを10セット行うパターンです。

 

いきなり速いペースで入ってしまうと脚を傷める恐れがあり、かなり負荷の高いトレーニングでもあるので、最初はフルマラソンよりも少し速いぐらいのペースから始めてみましょう。

 

▼インターバルトレーニングについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめ!

 

ITEM
HOKA ONEONE RINCON 2【メンズ】
●重量:218g (27.0cm)
●サイズ:25.0〜30.0cm
カラー:3色
ITEM
HOKA ONE ONE RINCON 2【レディース】
●重量:204g (24.0cm)
●サイズ:22.0〜25.0cm
●カラー:3色

 

インターバルはついつい負荷をかけすぎてしまうので、それをカバーできるようなシューズが理想的です。HOKA ONEONEの最新モデルRINCON2は、見た目を裏切る軽い履き心地で柔らかい走り心地を実現しました。トレーニングやレースでの速さと柔らかさの両方を求めたい、ちょっとわがままな?ランナーに最適なモデルです。

トレーニング②:坂道ダッシュ

女性ランナー 坂道ダッシュ

出典:PIXTA

長さ100mほどの坂道(短くても傾斜がきつければOK)をレースペースの8割程度までスピードを上げて走ります。登りきったらゆっくりと下まで降りて再度坂道ダッシュします。これを10セット繰り返します。

通常のインターバルよりも短時間で負荷をかけることができますし、スピードそのものは低いので故障のリスクも少なくなります。

練習後のプロテインでVO2max改善!

プロテインを飲む女性アスリート

出典:PIXTA

持久トレーニング中にタンパク質を補給することでVO2maxの向上が見られたという研究があります。タンパク質の摂取は食事からが基本ですが、運動後にプロテインを積極的に取ることで補強するのもおすすめです。

 

ITEM
ザバス ホエイプロテイン100 ココア
●容量:1050g

プロテインといえばやはり定番のザバスは外せません。栄養価の高さはもちろん、単純に「美味しい」。アスリートから一般の方まで高い支持を得ているのも納得です。

VO2maxを高めてワンランク上のランニングへ

女性ランナー ストレッチ

出典:PIXTA

がんばって練習しているつもりなのに、最近タイムが伸び悩みがち・・・という方に試していただきたいのがVO2maxを向上させるトレーニングです。日々のトレーニングで脚の筋肉は育っているのにそれを活かすためのエネルギーを生み出せるだけの酸素量が足りていない可能性があります。決して楽なトレーニングではなく、すぐに目に見えるような効果は上がるわけではありませんが、自分の目指す目標に向けてトライしてみてはいかがでしょうか。

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ひがしだいすけ
Morotsuka 51
Morotsuka 51

40歳を目前に陸上未経験で走り始めました。フルマラソンからウルトラマラソン、トレイルまでさまざまな大会にチャレンジしていますが、記録更新よりも楽しくいつまでも走り続けられるライフスタイルを目指しています。