伝統の「皇速」シューズ、ウエーブエンペラーはどんなシリーズ?
ミズノのウエーブエンペラーシリーズはどのような特長があるのでしょうか。
「軽量」設計、「薄底」仕様のスピードモデル
ナイキの「厚底革命」によって、ランニングシューズについては厚底モデルが主流となっています。それに対し、ウエーブエンペラーは伝統的な薄型ソールを採用した軽量モデルとされています。
ミズノのシューズチャートでは「スピードモデル」に分類されているので、タイムで言えばフルマラソンでサブ3.5以上を狙う方がターゲットとなるでしょう。
メンズはウエーブエンペラーJAPANに一本化
従来はスタンダードなウエーブエンペラーとよりレース向けのウエーブエンペラーJAPANの2種類がラインナップされていましたが、ウエーブエンペラーについては現在、レディースのみでメンズはウエーブエンペラーJAPANに一本化されています。
ウエーブエンペラーの特長だったアッパーのがっちりしたサポートベルト(画像参照)がエンペラーJAPANでは省略され、より軽量化を追求した仕様となっています。
エンペラージャパンでもサイドにアッパーと一体化したサポートは入っていますが、横方面の剛性感という点では従来のサポートベルトタイプの方が有利なので、スピード練習を始めたばかりという方であればスタンダードなウエーブエンペラーの方が適しているかもしれません。
メンズのウエーブエンペラーが欲しい方は店頭在庫のみとなるので、欲しい方は早めにストックしておいた方が良いでしょう。
ITEM
ミズノ ウエーブエンペラー3【メンズ】
●素材:アッパー 合成繊維、ソール 人工皮革
●重量:約195g(27.0cm片方)
●サイズ:24.5〜29.0cm
ITEM
ミズノ ウエーブ エンペラー 3【レディース】
●素材:アッパー 合成繊維・人工皮革、ソール 合成底
●重量:約165g(24.5cm片方)
●サイズ:22.0〜25.5cm
最新のウエーブエンペラーJAPAN 4はこんなモデル
それではウエーブエンペラーシリーズの最新モデル、ウエーブエンペラーJAPAN 4について解説していきます。
一見地味?いえ、実はハイテク満載のソール
最近のランニングシューズはハイテク化が進み、それをアピールするかのような派手なソールのものが増えました。それに比べるとウエーブエンペラージャパンのソールはシンプルなデザインでちょっと地味な印象もあります。
しかし、実際にはクッション性と安定を両立する「MIZUNO WAVE」、ミッドソールには軽量化と反発性を兼ね備えた「X10」、さらにアウトソールにはグリップ性を高めるために特殊樹脂を配した「G3ソール」と高機能な素材が組み合わされています。
高い屈曲性が安定した走りを生む
最近のレーシングモデルでは安定性よりも反発性を重視し、ソールを硬めに設定するモデルが増えています。
もちろん履きこなせる筋力が備わっていればスピードアップに効果がありますが、サブ3.5を狙うレベルのランナーではまだまだ筋肉がついていけずフォームが崩れてしまう可能性もあります。
ウエーブエンペラーJAPANでは、アウトソールにG3ソールを採用することで高い屈曲性を実現しています。後部分に採用された程よいクッション性の「MIZUNO WAVE」との組み合わせでそういったリスクは低くなるでしょう。
薄いソールを見て、ちょっとひるんでしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、ウエーブエンペラーJAPANは意外にもランナーにも優しい作りになっているのです。
中・短距離選手からも人気
軽く、グリップ性が高いウエーブエンペラーJAPANことから、レースではスパイクを愛用するような短距離や中距離の選手に愛用されることも多いようです。
ウエーブエンペラーJAPANのソリッドな着地の感覚はスパイクに通じるものがあるのでしょう。10kmやハーフで自己ベストを更新したい、という時にも頼りになるシューズかもしれません。
ITEM
ミズノ ウエーブ エンペラー ジャパン 4【ユニセックス】
●素材:アッパー 合成繊維・人工皮革、 アウトソール 合成底
●重量:約175g(26.0cm片方)
●サイズ:22.5〜28.5cm
ウェーブエンペラーのような薄底シューズってもう古いの?
トップアスリートがこぞって使用し、続々と好記録を叩き出している厚底シューズ、ウエーブエンペラーのような薄底のレーシングシューズはすでに過去のものなのでしょうか。
厚底シューズは重心が高くなりデメリットも
厚底シューズには重心が高くなることで着地が不安定になりがち、というデメリットもあります。
脚の筋肉がしっかりと鍛えられていれば、高い反発力を推進力に変えられるのですが、そうでない場合には重心の高さでフォームがぶれてしまい、せっかくの反発力を活かせないばかりか足首への負担が大きくなり、故障のリスクが高まることもありえます。
厚底を履くアスリートもトレーニングでは薄底を着用
ナイキの厚底シューズを履いて日本記録を出した大迫傑選手も、「厚底ばかりを履いていると故障のリスクは高くなるかもしれない。薄底シューズで足本来の力を高めることも大事」とインタビューで答えています。実際に、大迫選手はジョグやトレッドミルを走る際には、薄底で裸足感覚のナイキフリーを使用しているそうです。
多くのトップアスリートが厚底シューズで記録を更新しているのは、そのシューズに耐えられるだけの脚力があるから、という事実を忘れてはいけないでしょう。
ストライド走法には厚底、ピッチ走方には薄底
ランナーの走り方には大きく分けて、足の回転数で稼ぐ「ピッチ走法」と歩幅で稼ぐ「ストライド走法」の2種類があります。ストライド走法の場合は、厚底シューズの反発力を活かしてストライドを広く取れるのでスピードアップにつながります。
しかしピッチ走法の場合は着地のタイミングが変わることにより、走りのリズムが崩れてしまうので厚底ほどメリットを享受できなくない傾向があるようです。
あなたの走り方にそのシューズは合っていますか?
出典:PIXTA
当たり前の話ですが、誰でも速く走れる魔法のシューズというものは存在しません。厚底シューズにも、ウエーブエンペラーJAPANのような薄底シューズにもそれぞれ向き不向きがあります。
シューズを選ぶ際、特に本命のレースに使用するようなシューズならなおのこと「流行っているから」とか「日本記録を出したシューズだから」ではなく、自分の走り方を改めて見つめ直してみることも大事です。
実際に私の仲間内でも一度は厚底シューズを試してみたものの、「着地の感覚に馴染めない」と、従来の薄底シューズに戻した方もいました。
ウェーブエンペラーは確実に、実直に、ソリッドに路面を捉える
作家でランナーでもある村上春樹さんが、自身のエッセイ(「走ることについて語るときに僕の語ること」)の中でミズノのランニングシューズについて触れた一節があります。
村上さんはミズノのシューズについて、「新奇なギミックもないし、ファッション性にも乏しいし、派手な売り文句もない。しかしそのソールは、確実に、実直に、ソリッドに路面を捉える」と、評しています。
このエッセイが書かれたのはもう10年以上前ですが、ウエーブエンペラーには村上さんが指摘したミズノの特長が色濃く受け継がれているのではないでしょうか。
「流行の厚底がいいのはわかるけれど、ここ一番のレースでは信頼できるシューズでチャレンジしたい」、そんなベテランランナーにおすすめの一足です。
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